執行文付与に対する異議の訴においてその請求の原因として請求に関する異議の事由を主張することは許されない。
執行文付与に対する異議の訴においてその請求の原因として請求に関する異議の事由を主張することの許否
民訴法545条,民訴法546条
判旨
執行文付与に対する異議の訴え(民事執行法34条)において、請求異議事由(同法35条)を主張することは許されない。
問題の所在(論点)
執行文付与に対する異議の訴え(民事執行法34条)において、請求に関する異議の訴え(同法35条)の事由を主張することが許されるか。同訴訟の審理対象の範囲が問題となる。
規範
執行文付与に対する異議の訴えの審理対象は、条件成就執行文における条件成就の有無、または承継執行文における承継の存否といった執行文付与要件の存否に限られる。したがって、債務名義に表示された請求権の存否や内容に関する実体上の異議事由を、本訴の請求原因として主張することは認められない。
重要事実
債務名義に基づき執行文が付与されたことに対し、債務者が執行文付与に対する異議の訴え(旧民訴法546条、現民事執行法34条)を提起した。その際、債務者は執行文付与要件の欠如だけでなく、請求に関する異議事由(債務の消滅等)についても併せて主張し、執行の阻止を求めた。原審は、当該異議の訴えにおいて請求異議事由を主張することは許されないと判断したため、上告人がその違法を訴えた。
あてはめ
執行文付与に対する異議の訴えは、執行文の付与という執行機関の判断の適否を争うものである。本件において、上告人が主張する請求異議事由は、債務名義自体の執行力を実体法上の観点から否定しようとするものであり、執行文付与の形式的要件(条件成就や承継の事実)の存否とは別個の次元に属する。したがって、執行文付与の要件に関する争いのみを審理対象とする本訴の枠組みにおいて、請求権の存否にかかわる事由を審理することは、法の予定する不服申立制度の趣旨(審理対象の分立)に反すると解される。
結論
執行文付与に対する異議の訴えにおいて、請求異議事由を主張することは許されない。原審の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は旧民訴法下のものであるが、現行民事執行法34条においてもそのまま妥当する。実務上、債務者が執行阻止を図る際は、執行文付与の手続的瑕疵を争う「執行文付与に対する異議の訴え」と、実体的な請求権の消滅を争う「請求異議の訴え」を適切に選択・併合する必要がある。答案作成上は、訴訟物(審理対象)の峻別を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和40(オ)900 / 裁判年月日: 昭和43年2月20日 / 結論: その他
民訴法第五四五条の請求に関する異議の訴と同法第五四六条の執行文付与に対する異議の訴とは、目的を異にする別個の訴と解すべきである。
事件番号: 平成2(オ)295 / 裁判年月日: 平成6年5月31日 / 結論: 棄却
条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。