条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。
条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときと民法一三〇条の類推適用
民法130条
判旨
条件成就により利益を受ける当事者が、単なる調査の範囲を超えて、相手方を積極的に誘引して条件に係る違反行為をさせた場合、民法130条を類推適用し、条件は成就していないものとみなされる。
問題の所在(論点)
条件成就によって利益を受ける当事者が、自ら積極的に働きかけて条件を成就させた場合に、民法130条を類推適用して条件の不成就を認めることができるか。
規範
民法130条は、条件の成就によって不利益を受ける当事者が故意にその成就を妨げた場合に成就したものとみなす規定であるが、その反対の場面、すなわち条件成就によって利益を受ける当事者が、信義則に反し故意に条件を成就させた場合には、同条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。判断にあたっては、単なる違反行為の調査・確認の範囲を超えて、積極的に違反行為をするよう誘引したか否かが基準となる。
重要事実
上告人と被上告人らは、被上告人らが「櫛歯ピン」を付着した部分かつらを製造販売しないこと、違反した場合は違約金1000万円を支払う旨の裁判上の和解をした。その後、上告人の指示を受けたDは、客を装って被上告人Bの店舗で別種のピン付きかつらを購入契約した。Dは製作が進んだ段階で、上告人の意を受け「櫛歯ピンを付けないなら解約する」と強く要求。困惑した従業員はこれを拒み切れず、櫛歯ピン付きかつらを販売した。上告人はこの違反を理由に執行文付与を受けたが、被上告人らが執行文付与に対する異議の訴えを提起した。
事件番号: 昭和40(オ)900 / 裁判年月日: 昭和43年2月20日 / 結論: その他
民訴法第五四五条の請求に関する異議の訴と同法第五四六条の執行文付与に対する異議の訴とは、目的を異にする別個の訴と解すべきである。
あてはめ
被上告人Bが櫛歯ピン付きかつらを販売したことは和解条項違反に当たる。しかし、上告人はDを介し、単なる違反行為の有無の調査や確認の範囲を超えて、解約をちらつかせるなどして積極的に被上告人Bを誘引し、違反行為をさせている。これは条件成就により利益を受ける上告人が「故意に条件を成就させたもの」といえる。また、このような誘引行為が違反確認のためにやむを得ないといえる事情も認められない。したがって、信義則に照らし、民法130条の類推適用が認められるべきである。
結論
被上告人らは条件が成就していないものとみなすことができるため、当該和解調書に基づく強制執行は許されず、上告人の請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
条件成就の妨害(130条1項)の裏返しとして、利益を受ける側による「条件成就の不当な惹起」に関するリーディングケースである。答案上は、まず形式的な条件成就を指摘した上で、信義則を根拠とする130条類推適用の規範を立て、働きかけの態様(積極的誘引か単なる確認か)を具体的事実から評価してあてはめる。
事件番号: 昭和55(オ)51 / 裁判年月日: 昭和55年5月1日 / 結論: 棄却
執行文付与に対する異議の訴においてその請求の原因として請求に関する異議の事由を主張することは許されない。
事件番号: 昭和62(オ)1577 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
借地上の建物の賃借人は、地代の弁済について法律上の利害関係を有する。