民訴法第五四五条の請求に関する異議の訴と同法第五四六条の執行文付与に対する異議の訴とは、目的を異にする別個の訴と解すべきである。
執行文付与に対する異議の訴と請求に関する異議の訴
民訴法545条,民訴法546条
判旨
和解調書上の賃料不払による解除権の発生は民事執行法上の「条件」には当たらず、その事実を争って執行力の排除を求めるには、執行文付与に対する異議の訴えではなく、請求異議の訴えによるべきである。
問題の所在(論点)
和解調書に定められた賃料不払による契約解除の事実が、執行文付与の「条件」(民執法27条1項)に該当するか。また、これを争う場合に、執行文付与に対する異議の訴え(同法34条)によることができるか、あるいは請求異議の訴え(同法35条)によるべきか。
規範
和解調書において賃料を延滞したときは賃貸借契約を解除することができる旨の条項が定められた場合、賃料不払による解除の事実は民事執行法上の執行文付与の「条件」には該当しない。したがって、解除の事実を争い執行力の排除を求める手段は、請求異議の訴え(民執法35条)によるべきであり、執行文付与に対する異議の訴え(同法34条)によることはできない。
重要事実
上告人(債務者)と被上告人(債権者)との間の和解調書には、賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除条項が含まれていた。被上告人は賃料不払を理由に執行文の付与を受けたが、上告人は解除の事由が生じておらず執行文付与の条件が成就していないと主張。上告人は、執行文付与に対する異議の訴えを第一次請求、請求異議の訴えを予備的請求として提起した。第一審は第一次請求を棄却し予備的請求を認容したが、控訴審は附帯控訴の利益を否定して却下したため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和55(オ)51 / 裁判年月日: 昭和55年5月1日 / 結論: 棄却
執行文付与に対する異議の訴においてその請求の原因として請求に関する異議の事由を主張することは許されない。
あてはめ
和解調書上の解除条項は、一定の要件を満たした際に債権者に解除権を与えるものに過ぎず、給付義務そのものの発生・消滅を直接的に係らせる停止条件等とは性質を異にする。本件の和解条項に基づき賃料不払を理由として契約解除がなされた事実は、執行文付与の前提となる条件(民訴法旧518条2項、現行民執法27条1項)には当たらないと解される。したがって、上告人が主張する解除事実の不在という事由は、請求権の存否・内容に係る実体上の異議事由であり、請求異議の訴えの対象であっても、執行文付与の手続き的適法性を争う執行文付与に対する異議の訴えの対象とはならない。
結論
本件解除の事実は執行文付与の条件にあたらないため、これを理由とする執行文付与に対する異議の訴えは主張自体理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
執行文付与の条件(民執法27条1項)か、実体的な請求権の消滅事由(同法35条)かの区別を示す。意思表示を要する解除権行使などは後者として整理され、答案上は訴訟物の選択(訴えの適法性・理由の有無)の文脈で活用する。
事件番号: 昭和51(オ)1202 / 裁判年月日: 昭和52年11月24日 / 結論: 棄却
執行文付与の訴において請求に関する異議の事由を抗弁として主張することは、許されない。
事件番号: 昭和39(オ)1318 / 裁判年月日: 昭和41年3月29日 / 結論: 破棄差戻
賃料債務について履行遅滞にある賃借人が、賃貸人から賃貸借を解除される前に右延滞賃料額金一、六二〇円を弁済のため提供し、供託した場合において、右金額が正当な債務額より遅延損害金たる金一二円七〇銭ないし一四円が不足するとしても、右弁済提供および供託が、ただちに、債務の本旨に従わないものであるとはいえない。
事件番号: 平成2(オ)295 / 裁判年月日: 平成6年5月31日 / 結論: 棄却
条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。
事件番号: 昭和62(オ)1577 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
借地上の建物の賃借人は、地代の弁済について法律上の利害関係を有する。