動産執行による金銭債権の消滅時効中断の効力は、債権者が執行官に対しその執行の申立をした時に生ずる。
動産執行による時効中断の効力発生時期
民法147条,民事執行法2条,民事執行法122条1項
判旨
動産執行による金銭債権の消滅時効中断の効力は、債権者が執行官に対し執行の申立てをした時に生ずる。ただし、申立ての取下げ・却下や執行不能により現実に差押えがなされなかった場合には、中断の効力は遡及的に消滅する。
問題の所在(論点)
動産執行による金銭債権の消滅時効中断(旧民法147条2号、現民法148条1項1号)の効力が発生する時期は、執行の「申立て時」か、それとも「現実の差押え時」か。
規範
民法147条(現147条・148条)が時効中断を認める趣旨は、権利者が法定の手続に基づき「権利の行使」をした点にある。したがって、裁判上の請求が訴状提出時に効力を生ずるのと同様、差押えによる中断の効力も、執行機関(裁判所または執行官)に対し執行の申立てをした時に生ずると解すべきである。もっとも、同条にいう「差押え」は権利行使の開始たる申立てを含む手続全体を指すものであるから、現実に差押えがなされることが必要であり、申立ての取下げ・却下や債務者所在不明による執行不能等の場合には、中断の効力は遡及的に消滅する。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者(上告人)に対する貸金請求事件の確定判決(昭和46年8月確定)を債務名義として、時効完成直前である昭和56年8月5日に執行官に対し動産執行を申し立てた。執行官は、同月19日に動産を差し押さえた。これに対し債務者が、時効中断の効力は現実に差押えがなされた時に生ずるものであり、本件債権は申立てから差押えまでの間に10年の消滅時効が完成したと主張して争った。
あてはめ
本件において、被上告人が動産執行の申立てを行ったのは昭和56年8月5日であり、これは確定判決から10年の消滅時効期間が満了する前であった。不動産執行と動産執行は、執行機関に差異はあるものの、手続の目的・性格や職権進行の原則において異なるところはない。したがって、不動産執行と同様に、執行官への申立て時をもって「権利の行使」があったと評価すべきである。その後、同月19日に現実に差押えがなされているため、申立て時に生じた時効中断の効力が遡及的に消滅することもない。
結論
動産執行による時効中断の効力は申立て時に発生する。本件申立ては時効期間満了前になされており、消滅時効中断の抗弁は認められる。
実務上の射程
消滅時効の中断(更新)の始期を問う問題において、強制執行の事案であれば本判例を射程とする。答案上は、裁判上の請求(訴状提出時)との均衡や、申立て後の手続が職権で進行し債権者の関与が限定的であることを理由に「申立て時」とする規範を導く。また、執行不能時の遡及的消滅という例外についてもセットで論述できるようにしておくべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1411 / 裁判年月日: 昭和43年3月29日 / 結論: 棄却
金銭債権の強制執行として執行吏に対し動産に対する強制執行を委任しても、執行債務者の所在不明のため執行不能に終つた場合には、右金銭債権につき時効中断の効力は生じない。