判旨
請求異議の訴えにおける異議事由の存否は事実審の口頭弁論終結時を基準に判断すべきであり、催告における債務額の超過が僅少であれば、当該催告を無効とすることはできない。
問題の所在(論点)
1. 請求異議事由の存否を判断すべき標準時(基準時)はいつか。 2. 真実の債務額を超過する催告(過大催告)が行われた場合、その催告は無効となるか。
規範
1. 請求異議事由の存否の基準時:請求異議の当否は、事実審の口頭弁論終結当時を標準として判断すべきである。執行文付与時に執行をなし得ない事由があっても、口頭弁論終結時までに解消していれば請求異議は認められない。 2. 過大催告の有効性:催告に示された金額が真実の債務額を超過している場合であっても、その超過の程度が事案の性質に照らし、催告を無効としなければならないほど多額でないときは、当該催告は有効である。
重要事実
債務者(上告人)は、裁判上の和解に基づき債務を負っていたが、債権者が執行文の付与を受けて強制執行を申し立てた。債権者が行った催告等の請求金額は、執行費用を含めて計1,283円であった。しかし、原審が認定した真実の債務額はそれよりも540円少なく、債権者の請求額は実額を約7割上回る超過があった。上告人は、執行文付与当時の執行停止事由の存在や、過大催告による催告の無効を理由に請求異議を主張した。
あてはめ
1. 基準時について:請求異議事件においても、他の訴訟と同様に事実審の口頭弁論終結時が基準となる。本件において執行文付与時に執行を妨げる事由があったとしても、原審の口頭弁論終結時までにその事由が消滅している以上、請求異議は排斥されるべきである。 2. 過大催告について:本件の超過額は540円(請求額1,283円に対し)であり、原審が認定した事実関係の下では、この程度の超過は催告自体を無効とするほど過大とはいえない。したがって、当該催告に基づく効力を否定することはできない。
結論
請求異議の当否は事実審の口頭弁論終結時を基準とすべきであり、本件のような軽微な過大催告は催告としての効力を失わない。したがって、請求異議は失当である。
実務上の射程
請求異議の訴えの基準時に関する基本判例である。民事執行法上の請求異議の訴え(35条)において、判決以外の債務名義の場合でも、異議事由の存否は常に口頭弁論終結時が基準となることを明確にしている。また、過大催告の限界については、本件のような少額の事案では「無効とするほどではない」という緩やかな判断がなされる傾向にあるが、実務上は「債務の同一性を欠くほど過大か」という観点から検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和57(オ)727 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: 棄却
動産執行による金銭債権の消滅時効中断の効力は、債権者が執行官に対しその執行の申立をした時に生ずる。