金銭債権の強制執行として執行吏に対し動産に対する強制執行を委任しても、執行債務者の所在不明のため執行不能に終つた場合には、右金銭債権につき時効中断の効力は生じない。
執行債務者の所在不明による執行不能と時効中断
民法147条,民訴法第6編第2章第1節
判旨
差押えによる時効中断の効力が生ずるためには、執行債権者が執行吏に対して執行の委任をするだけでは足りず、執行吏において実際に執行に着手することを要する。
問題の所在(論点)
執行債権者が執行吏に執行を委任し、執行吏が現場に臨んだものの、債務者不在により執行不能となった場合に、旧民法147条2号(現行法147条1項2号)の「差押え」による時効中断の効力が認められるか。
規範
旧民法147条2号(現行民法147条1項2号)に規定される差押えによる時効中断の効力が発生するためには、単に執行債権者が執行吏に対して執行の委任をすることでは不十分であり、執行吏が具体的な執行行為に着手することが必要であると解すべきである。
重要事実
執行債権者(上告人)は、債務名義に基づく金銭債権の強制執行を執行吏に委任した。執行吏は、債務名義に表示された債務者(被上告人ら)の住所に臨んだ。しかし、債務者が所在不明であったため、具体的な差押えの手続に入ることができず、執行不能という結果に終わった。上告人は、この一連の行為によって時効が中断したと主張した。
あてはめ
本件において、執行吏は確かに債務者の住所に臨んでいるが、債務者の所在不明により執行不能となっており、具体的な差押えの目的を達するための「執行の着手」があったとは認められない。執行債権者が執行の委任を行った事実は認められるものの、判例の示す規範に照らせば、執行吏による具体的な執行行為の開始(執行の着手)を欠く以上、時効中断の効力は発生しないと評価される。
結論
執行吏が現場に臨んでも執行不能に終わった場合には、執行の着手があったとはいえず、差押えによる時効中断の効力は生じない。
実務上の射程
強制執行の申立てや委任のみでは足りず、差押えの着手が必要であることを明確にした。現行法下の「差押え」による時効の完成猶予(民法147条1項2号)の解釈においても、実効的な権利行使の有無を判断する際の指標となる。ただし、動産執行等の現場臨場がどの程度の行為を指すかについては事案ごとの検討を要する。
事件番号: 昭和40(オ)652 / 裁判年月日: 昭和42年4月11日 / 結論: 棄却
執行債権と競落代金との差引計算は配当期日において許された場合にはじめてその効力を生ずるものであるから、控訴人(上告人)が原判示のごとくあらかじめ差引計算の意思表示をしても、これにより控訴人の本件債権および費用が消滅するいわれはない旨の原審の判断は正当である。