被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例
刑法199条,刑法225条,刑法190条,刑訴法411条2号
判旨
殺害の計画性が認められず、かつ生命侵害の前科がない1名殺害の事案において、死刑の選択が真にやむを得ないとはいえないとした事例。
問題の所在(論点)
殺害の計画性が認められず、被害者が1名である事案において、犯行態様の残虐性や動機の身勝手さを考慮しても、死刑を選択することが許容されるか。死刑選択における「公平性の確保」と「慎重な適用」の限界が問題となる。
規範
死刑の適用は、死刑が究極の刑罰であることに鑑み慎重に行われなければならず、また、刑の公平性の確保という観点も踏まえなければならない。具体的には、罪質、動機、態様、結果の重大性等の量刑要素を総合的に評価し、被告人の刑事責任が誠に重大であっても、死刑を選択することが真にやむを得ないと認められる場合に限られる。
重要事実
被告人は、当時6歳の被害者をわいせつ目的で誘拐し、ビニールロープで絞首した上、包丁で後頸部を複数回突き刺して殺害した。さらに遺体を切断して損壊・遺棄した。殺害は、誘拐の発覚免脱と遺体へのわいせつ行為を目的とした突発的なものであり、計画性は認められない。被告人に同種の重大な前科はなく、生命侵害は本件の1回のみであった。第1審は死刑を選択したが、原審は無期懲役とした。
あてはめ
本件の動機は身勝手であり、殺害態様は冷酷かつ残忍、死体損壊等は凄惨であって、被告人の生命軽視の姿勢は明らかである。しかし、殺害の計画性が認められない点は相応に重視すべきである。また、1名殺害の同種事案において、計画性がなく、かつ性的被害を伴わず重大前科もない場合に死刑が選択されていないという近時の裁判例の傾向(公平性)に照らせば、被告人の生命侵害が1回にとどまる本件において、生命軽視の姿勢が「甚だしく顕著」とまではいえない。したがって、死刑選択が真にやむを得ないとはいえない。
事件番号: 平成13(あ)1205 / 裁判年月日: 平成18年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて残虐かつ計画的な犯行により4名の女児を殺害し、社会に甚大な衝撃を与えた事案において、被告人の身体的障害等の酌むべき事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和63年から平成元年にかけ、自己の性的欲求や収集欲を満たすため、4歳から7歳の女児5名を誘拐。うち4名を山…
結論
被告人の刑事責任は誠に重大であるが、死刑を選択した第1審判決を破棄し、無期懲役を宣告した原判決を維持するのが相当である。
実務上の射程
死刑選択の判断に際し、「殺害の計画性」の有無および「被害者数(前科含む)」が、公平性の観点から決定的な考慮要素となることを改めて示した。
事件番号: 昭和60(あ)1497 / 裁判年月日: 平成4年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科等を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に認められる。無期懲役の仮出獄中に同種の幼女殺害に及んだ本件では、計画性の欠如や反省等の事情を考慮しても、死刑の科刑は是認される。 第1…
事件番号: 平成20(あ)1911 / 裁判年月日: 平成23年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が不倫関係にある女性2名を相次いで殺害し、うち1名の遺体を切断・遺棄した事案において、各殺害が事前の具体的計画に基づくものではなく、被告人に前科がない等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、動機の身勝手さ、および真摯な反省の欠如に鑑みれば、死刑に処した第一審判決を維持した原判決は是…
事件番号: 平成15(あ)600 / 裁判年月日: 平成18年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪に問われた被告人に対し、犯行の残虐性、結果の重大性、および動機の身勝手さを重視し、死刑に処した一審判決を維持した原判決は、量刑の衡平を欠くものではなく相当である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者2名と共謀のうえ、金品強取の目的で、何ら落ち度のない女性2名を絞殺した。犯行は計画的か…
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…