死刑の量刑が維持された事例(愛知県の交際2女性殺害事件)
判旨
被告人が不倫関係にある女性2名を相次いで殺害し、うち1名の遺体を切断・遺棄した事案において、各殺害が事前の具体的計画に基づくものではなく、被告人に前科がない等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、動機の身勝手さ、および真摯な反省の欠如に鑑みれば、死刑に処した第一審判決を維持した原判決は是認せざるを得ない。
問題の所在(論点)
殺人の事案において、犯行が計画的ではなく、かつ被告人に前科がないという有利な事情がある場合に、死刑を選択することが許されるか(死刑選択の適否)。
規範
死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考慮し、罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される(永山基準)。
重要事実
被告人は(1)平成11年、不倫相手との生活に行き詰まりを感じていた際、返済資金をめぐる口論から女性(当時43歳)を頸部扼殺により殺害し、(2)その3年9か月後の平成15年、別の不倫相手との背信的取引の発覚を恐れ、結婚を迫る同女(当時49歳)と口論になった際、同様の手口で殺害した。さらに(2)の遺体をカッターナイフで切断し川や土中に遺棄した。被告人は前科がなく、各犯行は突発的であったが、公判では不合理な弁解に終始した。
あてはめ
まず、犯行態様は二度までも頸部を扼する確定的殺意に基づくもので冷酷・残忍であり、特に後者では遺体切断・遺棄に及ぶなど顕著な犯罪的傾向が認められる。次に、動機は不倫関係の清算や背信行為の発覚回避という身勝手なもので、被害者に落ち度はない。結果として2名の尊い生命が失われた事象は極めて重大であり、遺族の処罰感情も峻烈である。被告人は不合理な弁解を続けており反省の情も乏しい。以上を考慮すれば、計画性の欠如や前科がないという事情を十分に斟酌しても、その罪責は極めて重大であるといえる。
事件番号: 平成17(あ)1840 / 裁判年月日: 平成21年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、その執行方法を含めて憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて重大な罪責を負う犯行については、前科がない等の事情を考慮しても死刑の適用が是認される。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、共同して犬の繁殖販売業を営んでいた。両名は共謀の上、トラブル等があった被害者3名に対し、猛毒の硝酸…
結論
被告人の刑事責任は誠に重大であり、死刑を選択した原判断は正当として上告を棄却する。
実務上の射程
死刑選択の基準(永山基準)の適用事例。特に、殺害人数が2名で、計画性がない場合や前科がない場合であっても、犯行の残虐性や再犯性、犯行後の情状(死体損壊や反省の欠如)を重視して死刑が維持される判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成20(あ)852 / 裁判年月日: 平成23年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公訴事実を認め、反省の情を示していないなどの諸事情に鑑み、原判決の量刑は正当として維持されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は平らな場所において被害者の殺害を企て、実際に殺害を実行した。被告人は公判廷において殺害の事実を認めているものの、反省の情がうかがえるような合理的な弁解を述べて…
事件番号: 平成6(あ)1024 / 裁判年月日: 平成10年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】半年余りの間に3名の命を奪った結果は極めて重大であり、犯行態様が冷酷、残忍かつ非情であって、遺族の被害感情も極めて厳しい等の事情がある場合には、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の科刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共に借金トラブルからBを殺害・遺棄し、その後、共犯者の父Dか…
事件番号: 平成22(あ)2003 / 裁判年月日: 平成24年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】殺人の前科があり、反省の機会を与えられていたにもかかわらず、再び同様の残虐な手法で殺害及び死体損壊・遺棄に及んだ場合、自白等の有利な事情を考慮しても死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、以前に交際女性を窒息死させ死体損壊・遺棄に及んだ際、殺人罪を免れ死体損壊罪等のみで刑に服していた。…