死刑の量刑が維持された事例(フィリピン人女性殺人等事件)
判旨
殺人の前科があり、反省の機会を与えられていたにもかかわらず、再び同様の残虐な手法で殺害及び死体損壊・遺棄に及んだ場合、自白等の有利な事情を考慮しても死刑の選択は免れない。
問題の所在(論点)
過去に類似の犯行に関与しつつ殺人罪を免れた経緯がある被告人が、再び残虐な手法で1人を殺害し死体損壊・遺棄に及んだ事案において、自白等の情状を考慮しても死刑を選択することが許容されるか。
規範
死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(殺害人数や遺族の被害感情)、社会的な影響、及び被告人の前科や反省の状況等を総合的に考慮し、刑事責任が極めて重大であって、罪責に照らしやむを得ない場合にのみ認められる。
重要事実
被告人は、以前に交際女性を窒息死させ死体損壊・遺棄に及んだ際、殺人罪を免れ死体損壊罪等のみで刑に服していた。しかし、出所後に別の交際女性との関係が悪化すると、過去の殺害場面を想起しながら同様に窒息死させて殺害した。さらに、発覚を免れるため、カッターナイフ等を用いて4時間近くかけ、死体を40片以上の部位に解体して損壊し、運河等に遺棄した。被告人は捜査段階で詳細な自白をしていた。
あてはめ
本件殺害は、思い通りにならない被害者への怒りを短絡的に転化させたもので動機に酌量の余地はない。殺害態様は執拗かつ残忍であり、特に死体損壊は臓器の取り出しや肉の削ぎ落としを伴う極めて残虐なものである。被告人は前回の犯行後に反省・悔悟の機会があったにもかかわらず、その経験を悪用して本件に及んでおり、規範意識の麻痺が著しい。22歳の若さで命を絶たれた被害者の結果は重大であり、遺族の処罰感情も峻烈である。捜査段階での自白等の有利な事情を考慮しても、刑事責任は誠に重大である。
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…
結論
被告人を死刑に処した原判決の判断は、死刑選択の基準に照らして是認できる。
実務上の射程
殺害人数が1人の場合でも、犯行態様が極めて残虐であり、かつ類似の先行事案(殺人の前科に準ずる経緯)を経て再犯に及んでいるような場合には、永山基準の下でも死刑が維持され得ることを示す実務上の重要な指針となる。
事件番号: 平成20(あ)1911 / 裁判年月日: 平成23年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が不倫関係にある女性2名を相次いで殺害し、うち1名の遺体を切断・遺棄した事案において、各殺害が事前の具体的計画に基づくものではなく、被告人に前科がない等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、動機の身勝手さ、および真摯な反省の欠如に鑑みれば、死刑に処した第一審判決を維持した原判決は是…
事件番号: 平成20(あ)852 / 裁判年月日: 平成23年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公訴事実を認め、反省の情を示していないなどの諸事情に鑑み、原判決の量刑は正当として維持されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は平らな場所において被害者の殺害を企て、実際に殺害を実行した。被告人は公判廷において殺害の事実を認めているものの、反省の情がうかがえるような合理的な弁解を述べて…
事件番号: 平成17(あ)1840 / 裁判年月日: 平成21年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、その執行方法を含めて憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて重大な罪責を負う犯行については、前科がない等の事情を考慮しても死刑の適用が是認される。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、共同して犬の繁殖販売業を営んでいた。両名は共謀の上、トラブル等があった被害者3名に対し、猛毒の硝酸…
事件番号: 平成13(あ)670 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】筋弛緩剤を用いた5名の殺害および死体遺棄事件において、動機の身勝手さ、犯行態様の残虐性、結果の重大性を鑑みれば、反省の情等の有利な事情を考慮しても死刑判決の維持は正当である。 第1 事案の概要:被告人は、約1年4か月の間に、職場の同僚、知人、アルバイト、取引先女性ら計5名を、筋弛緩剤を注射する方法…