死刑の量刑が維持された事例(大阪の愛犬家ら連続殺人等事件)
判旨
筋弛緩剤を用いた5名の殺害および死体遺棄事件において、動機の身勝手さ、犯行態様の残虐性、結果の重大性を鑑みれば、反省の情等の有利な事情を考慮しても死刑判決の維持は正当である。
問題の所在(論点)
殺人と死体遺棄の罪に問われた被告人に対し、5名という多数の被害者が生じた本件において、死刑を適用することが量刑上妥当か。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の性質(動機、態様等)、②結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、③遺族の被害感情、④社会的影響、⑤犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に認められる(永山基準)。
重要事実
被告人は、約1年4か月の間に、職場の同僚、知人、アルバイト、取引先女性ら計5名を、筋弛緩剤を注射する方法により相次いで殺害し、死体を畑に埋めて遺棄した。動機は、被害者からの非難を免れるためや、資金援助の催促を煩わしく感じたこと、死体遺棄の露見を防ぐためといった身勝手なものであった。被告人は捜査段階で犯行を認め、反省の情を示していた。
あてはめ
まず、動機は金銭トラブルや自己保身に端を発しており酌量の余地がない。犯行態様は、無抵抗の被害者に筋弛緩剤を注射して殺害するものであり、冷酷かつ非道である。結果については5名もの生命が奪われており極めて重大である。また、短期間に犯行を重ねている点から殺人の傾向も顕著である。遺族の処罰感情も厳しく、社会への影響も大きい。被告人が反省の情を示している等の有利な事情を考慮しても、罪責は誠に重大である。
結論
被告人の罪責は極めて重大であり、第一審の死刑判決を維持した原判決は相当であって、死刑の科刑を是認せざるを得ない。
事件番号: 平成17(あ)1840 / 裁判年月日: 平成21年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、その執行方法を含めて憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて重大な罪責を負う犯行については、前科がない等の事情を考慮しても死刑の適用が是認される。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、共同して犬の繁殖販売業を営んでいた。両名は共謀の上、トラブル等があった被害者3名に対し、猛毒の硝酸…
実務上の射程
多数の被害者が生じた殺人事件(特に永山基準以降の重要判例)における量刑判断の具体例として活用する。特に、筋弛緩剤という特殊な殺害手段や、計画的・反復的な犯行が死刑選択において重く評価されることを示す際に参照すべき判決である。
事件番号: 平成16(あ)659 / 裁判年月日: 平成19年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無期懲役刑の仮出獄中に、前科と類似した経緯・態様で殺害及び死体遺棄に及んだ場合、被告人の根強い犯罪性や結果の重大性に鑑み、死刑の選択はやむを得ない。死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しないとするのが当裁判所の確立した判例である。 第1 事案の概要:被告人は、過去に2度の殺人・死体遺棄により…
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 平成6(あ)1024 / 裁判年月日: 平成10年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】半年余りの間に3名の命を奪った結果は極めて重大であり、犯行態様が冷酷、残忍かつ非情であって、遺族の被害感情も極めて厳しい等の事情がある場合には、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の科刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共に借金トラブルからBを殺害・遺棄し、その後、共犯者の父Dか…