死刑の量刑が維持された事例(埼玉愛犬家連続殺人事件)
判旨
死刑制度は、その執行方法を含めて憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて重大な罪責を負う犯行については、前科がない等の事情を考慮しても死刑の適用が是認される。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、及び複数の殺人・死体損壊・遺棄が行われた事案において、被告人の前科のなさ等の情状を考慮しても死刑を選択することが許されるか(死刑選択の合理性)。
規範
死刑制度及びその執行方法は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の適用にあたっては、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の残虐性)、結果の重大性(殺害人数等)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の境遇、反省の状況等の諸事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に許される。
重要事実
被告人A及びBは、共同して犬の繁殖販売業を営んでいた。両名は共謀の上、トラブル等があった被害者3名に対し、猛毒の硝酸ストリキニーネを栄養剤と偽って飲ませ中毒死させた(Aはさらに単独で別の1名を同様に殺害)。その後、共犯者と共に死体を解体・焼損して投棄した。Aは計4名、Bは計3名の生命を奪った。被告人らは不合理な弁解を繰り返し、真摯な反省も見られなかった。
あてはめ
本件は、計画的かつ動機に酌量の余地がない。犯行態様は、猛毒を飲ませて苦悶死させた上、死体を切り刻み焼却するという冷酷無慈悲で悪質なものである。Aは4名、Bは3名の生命を奪った結果は誠に重大である。被告人らの不合理な弁解や反省の欠如、遺族の被害感情を鑑みれば、Aに科料前科しかないことや、Bが1件の実行行為に非関与で前科がないといった事情を考慮しても、その罪責は極めて重大であるといえる。
結論
事件番号: 平成13(あ)670 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】筋弛緩剤を用いた5名の殺害および死体遺棄事件において、動機の身勝手さ、犯行態様の残虐性、結果の重大性を鑑みれば、反省の情等の有利な事情を考慮しても死刑判決の維持は正当である。 第1 事案の概要:被告人は、約1年4か月の間に、職場の同僚、知人、アルバイト、取引先女性ら計5名を、筋弛緩剤を注射する方法…
被告人両名を死刑に処した第1審判決を維持した原判決は相当であり、是認せざるを得ない。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」を踏襲し、特に犯行態様の残虐性と結果の重大性を重視して死刑の妥当性を判断した事例。憲法31条、36条等との関係で死刑制度の合憲性を改めて確認する際や、具体的量刑判断のあてはめのモデルとして参照される。
事件番号: 平成20(あ)1911 / 裁判年月日: 平成23年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が不倫関係にある女性2名を相次いで殺害し、うち1名の遺体を切断・遺棄した事案において、各殺害が事前の具体的計画に基づくものではなく、被告人に前科がない等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、動機の身勝手さ、および真摯な反省の欠如に鑑みれば、死刑に処した第一審判決を維持した原判決は是…
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…