死刑事件(幼女殺害事件)
判旨
死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科等を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に認められる。無期懲役の仮出獄中に同種の幼女殺害に及んだ本件では、計画性の欠如や反省等の事情を考慮しても、死刑の科刑は是認される。
問題の所在(論点)
死刑の選択が許容される判断基準(量刑の著しい不当の有無)と、無期懲役の仮出獄中に同種の凶悪犯罪を再犯した場合における死刑適用の可否が問題となる。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦被告人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状の諸点を総合的に考慮し、その罪責がまことに重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めてやむを得ない場合に認められる(永山判決の枠組みを維持)。
重要事実
被告人は、過去に7歳の幼女を強姦しようとして絞殺した前科により無期懲役に処せられていたが、その仮出獄中に本件を敢行した。まず5歳の幼女にわいせつ行為を行い、同日夜、3歳の幼女を自室に連れ込みわいせつ行為に及んだ際、同女が「ママのところへ帰る」と言い出したため、発覚を恐れて両手で首を絞めて殺害し、死体を遺棄した。
あてはめ
本件は、無抵抗な3歳児の生命を自己のわいせつ行為の発覚免脱のために奪ったもので、動機・態様ともに冷酷である。被害者が1名であること、計画的でないこと、被告人の反省や知能程度等の有利な事情を考慮しても、無期懲役の仮出獄中に再び同種の幼女殺害を繰り返したという前科(事由⑧)および再犯可能性は極めて重く、遺族や社会に与えた影響も深刻である。これらを総合すると、その罪責は重大であるといえる。
事件番号: 平成13(あ)1205 / 裁判年月日: 平成18年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて残虐かつ計画的な犯行により4名の女児を殺害し、社会に甚大な衝撃を与えた事案において、被告人の身体的障害等の酌むべき事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和63年から平成元年にかけ、自己の性的欲求や収集欲を満たすため、4歳から7歳の女児5名を誘拐。うち4名を山…
結論
被告人に対する死刑の科刑は、当裁判所もこれをやむを得ないものとして是認せざるを得ない。
実務上の射程
被害者が1名であっても、同種の重大前科(特に無期懲役の仮出獄中)がある場合には、他の情状(罪質・態様等)と相まって死刑が選択されうることを示した事例。司法試験においては、死刑選択の判断枠組み(永山基準)の適用例として、特に前科の重みを評価する際の参考となる。
事件番号: 平成16(あ)659 / 裁判年月日: 平成19年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無期懲役刑の仮出獄中に、前科と類似した経緯・態様で殺害及び死体遺棄に及んだ場合、被告人の根強い犯罪性や結果の重大性に鑑み、死刑の選択はやむを得ない。死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しないとするのが当裁判所の確立した判例である。 第1 事案の概要:被告人は、過去に2度の殺人・死体遺棄により…
事件番号: 平成13(あ)1162 / 裁判年月日: 平成17年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かは、永山事件判決(最判昭58.7.8)の示した9つの判断要素を総合考慮して決定されるべきであり、本件においても、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況を慎重に検討した結果、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の…
事件番号: 昭和49(あ)1733 / 裁判年月日: 昭和50年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の科刑が許容されるか否かの判断においては、犯行の動機、態様、結果の重大性、被告人の役割、前科、被害者の感情、社会的影響等の諸般の情状を総合的に考慮し、その刑責が極めて重いといえる場合には、死刑の選択もやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀の上、強姦目的で男女を襲撃した。まず男性…