死刑事件
判旨
死刑の科刑が許容されるか否かの判断においては、犯行の動機、態様、結果の重大性、被告人の役割、前科、被害者の感情、社会的影響等の諸般の情状を総合的に考慮し、その刑責が極めて重いといえる場合には、死刑の選択もやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑判決を選択する際の判断基準、及び本件のような凄惨な強盗強姦殺人等の事案において死刑を維持することが刑罰の均衡や情状の考慮に照らして妥当か。いわゆる永山基準(最判昭58.7.8)の先駆けとなる死刑量刑判断の枠組みが問われた。
規範
死刑の選択にあたっては、①犯行の動機、②犯行の態様(特に殺害手段の執拗性・残虐性)、③結果の重大性、④被告人の占めた役割、⑤前科前歴、⑥被害者の年齢、⑦社会的影響、⑧その他諸般の情状を総合考慮し、その刑責が誠に重く、極めてやむを得ない場合にのみ認められる。
重要事実
被告人は共犯者と共謀の上、強姦目的で男女を襲撃した。まず男性を殺害して抵抗を排除し、女性を強姦した後、犯跡隠蔽のため同女をも殺害して死体を遺棄した。殺害方法は執拗かつ残虐であり、被害者両名は当時19歳であった。被告人は犯行において主導的役割を果たしており、前科前歴も存在した。
あてはめ
本件では、強姦及び証拠隠滅という動機に酌量の余地はなく、殺害手段も執拗かつ残虐である(要素①②)。2名の尊い生命を奪った結果は極めて重大であり(要素③)、被告人が主導的役割を果たした点や前科等の属性も考慮すると刑事責任は著しく重い(要素④⑤)。19歳という被害者の若さや社会に与えた衝撃も大きく(要素⑥⑦)、これらの諸点(要素⑧)を総合すれば、原審の死刑判決は「まことにやむを得ないもの」として是認できる。
結論
事件番号: 昭和54(あ)912 / 裁判年月日: 平成2年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、本件のごとき重大な刑責を負う事案においては死刑の選択はやむをえないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は約2年の間に3回にわたり、夜間帰宅途中の婦女を襲って強姦した。その際、当時19歳の女性2名を殺害し、うち1名の死体を山林に遺棄した。弁護人は、死刑制度…
被告人の刑責は誠に重く、死刑を科した第一審判決を維持した原判決は正当であるとして、上告を棄却した。
実務上の射程
死刑量刑の考慮要素を列挙した初期の重要な判例であり、後の「永山基準」の骨格を成す。実務上、極刑が予想される重大事件の論述において、量刑事情を整理・評価する際のスタンダードな枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成13(あ)803 / 裁判年月日: 平成17年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断にあたっては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は昭和60年から平成7年にかけ、5名の女性・女児を殺害した。内訳は、情交関係にあ…
事件番号: 平成6(あ)1024 / 裁判年月日: 平成10年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】半年余りの間に3名の命を奪った結果は極めて重大であり、犯行態様が冷酷、残忍かつ非情であって、遺族の被害感情も極めて厳しい等の事情がある場合には、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の科刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共に借金トラブルからBを殺害・遺棄し、その後、共犯者の父Dか…
事件番号: 昭和58(あ)581 / 裁判年月日: 平成2年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、殺害方法の執拗性・残虐性、被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状等、一切の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重いと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、農作業中の主婦を強姦目的で襲い、抵抗されたため頸部を強…