平成28年法律第54号による改正前の刑訴法157条の3,157条の4と憲法37条1項,2項前段,82条1項
憲法37条1項,憲法37条2項,憲法82条1項,刑訴法(平成28年法律第54条による改正前のもの)157条の3,刑訴法(平成28年法律第54条による改正前のもの)157条の4
判旨
旧刑訴法157条の3(証人尋問における付添い等)及び157条の4(ビデオリンク方式による尋問)の規定は、憲法37条1項、2項前段、82条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
旧刑訴法157条の3(付添い)及び157条の4(ビデオリンク方式)による尋問手続が、被告人の公開裁判を受ける権利(憲法82条1項、37条1項)および証人尋問権・対質権(憲法37条2項前段)に抵触し、違憲ではないか。
規範
刑事被告人の権利として、憲法37条1項は公平な裁判所の迅速な公開裁判を、同2項前段は証人尋問権(対質権)を、憲法82条1項は対審の公開をそれぞれ保障する。もっとも、これらの権利も絶対無制限ではなく、証人の保護や適正な事実認定の確保という司法上の要請から、必要かつ合理的な制限を受ける。判例は、証人の心理的負担を軽減するための遮へい措置やビデオリンク方式等の制度につき、被告人の防御権を実質的に侵害せず、かつ公正な裁判の実現を目的とするものであれば、憲法上の各規定に違反しないと解している。
重要事実
本件は、強制わいせつ致傷、千葉県迷惑防止条例違反、建造物侵入、傷害の各罪に問われた被告人に対し、証人尋問の際に旧刑訴法157条の3(付添い)及び157条の4(ビデオリンク方式)が適用された事案である。弁護人は、これらの規定が被告人の反対尋問権や公開裁判を受ける権利を侵害し、違憲であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判例の趣旨に照らせば、ビデオリンク方式等の措置は、証人が受ける精神的苦痛を緩和しつつ、同時に証言の真正を確保することで、真実の発見を容易にするための合理的手段といえる。これらの制度下においても、被告人は弁護人を通じて反対尋問を行う機会が確保されており、裁判官も証人の表情や供述態度を十分に観察することが可能である。したがって、公開裁判の原則や対質権の核心的利益を損なうものではなく、正当な司法目的(証人保護と適正な手続)のための必要かつ合理的な制限の範囲内にあると評価される。
結論
旧刑訴法157条の3および157条の4の各規定は、憲法37条1項、2項前段、82条1項に違反しない。
実務上の射程
本判決は平成28年改正前の規定に関するものであるが、現在の刑訴法における証人保護規定の合憲性を改めて確認する意義を持つ。答案作成上は、証人保護措置の合憲性が問われた際、本判決が引用する大法廷判例群の趣旨を引いた上で、「必要かつ合理的な制限」として合憲と結論付けるための根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)2408 / 裁判年月日: 昭和31年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が手錠をはめられたまま証人尋問に立ち会わされたとしても、それにより反対尋問の権利が妨げられたという事実が記録上認められない限り、違憲の主張は成立しない。 第1 事案の概要:被告人がAほか4名に対する公判廷外の証人尋問が行われた際、手錠をはめられたまま立ち会わされたことが、反対尋問を妨げられた…
事件番号: 昭和32(あ)1531 / 裁判年月日: 昭和33年3月6日 / 結論: 棄却
一 共犯者たる共同被告人が数名あつて、いずれも、公判で、公訴事実を全面的に否認している場合、検察官が証拠として同被告人等の検察官に対する供述調書を一括して取調請求をしたときは、特段の事情がない限り、同供述調書は、刑訴第三二二条第一項および第三二一条第一項第二号により、当該被告人に対する関係のみならず、相被告人等に対する…
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