相続財産についての情報が被相続人に関するものとしてその生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人又は受遺者に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たるということはできない。
相続財産についての情報と個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)2条1項
判旨
ある情報が「個人に関する情報」に当たるか否かは、情報の性質と当該個人との関係を個別に検討すべきであり、相続財産に関する被相続人の情報が相続により直ちに相続人の個人情報になるわけではない。
問題の所在(論点)
相続財産である預金契約に関する被相続人の印鑑届書の情報が、当該預金債権を相続した相続人本人に関する「個人に関する情報」(個人情報保護法2条1項)に該当するか。
規範
ある情報が特定の個人に関するものとして個人情報保護法2条1項の「個人に関する情報」に当たるか否かは、当該情報の内容と当該個人との関係を個別に検討して判断すべきである。したがって、相続財産についての情報が被相続人の生前に「個人に関する情報」に当たっていたとしても、そのことから直ちに、当該相続財産を取得した相続人等に関する「個人に関する情報」に当たるとはいえない。
重要事実
亡母は銀行(上告人)に預金口座を開設する際、印影や住所氏名等が記載された印鑑届書を提出した。亡母の死後、法定相続人の一人であり遺言により預金の一部を相続した子(被上告人)が、銀行に対し、当該印鑑届書の情報は自己の「保有個人データ」に該当すると主張して、法28条1項(当時)に基づき開示を求めた。
事件番号: 平成19(受)1919 / 裁判年月日: 平成21年1月22日 / 結論: 棄却
1 金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負う。 2 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。
あてはめ
本件印影は亡母が銀行取引で使用するために届け出たものであり、被上告人が預金契約上の地位を相続したからといって、当該印影が被上告人と銀行との取引で使用されることにはならない。また、届書に記載された住所氏名等の内容も被上告人と銀行との取引に関するものとはいえず、その他に当該情報の内容が被上告人本人に関するものであるというべき事情は認められない。よって、本件情報は被上告人に関する情報とは解されない。
結論
本件印鑑届書の情報は被上告人の「個人に関する情報」には当たる。したがって、保有個人データとしての開示請求は認められない。
実務上の射程
相続人が被相続人の生前の情報を開示請求する際、単に「相続により権利を承継した」というだけでは開示主体としての適格(自己に関する情報であること)を満たさないことを示した。銀行実務や自治体の個人情報保護条例の解釈において、相続人による被相続人の情報開示請求の可否を判断する重要な指針となる。
事件番号: 平成9(行ツ)21 / 裁判年月日: 平成13年12月18日 / 結論: 棄却
公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づき個人情報の記録された公文書の公開請求を本人及びその配偶者が共同でした場合に,当該公開請求自体から本人自身による請求であることが明らかであり,同条例には自己の個人情報の開示を請求することを許さない趣旨の規定等は存在せず,当時,兵庫県では個人情報保護制度が採用…
事件番号: 平成12(行ヒ)334 / 裁判年月日: 平成15年11月21日 / 結論: その他
1 富山県の職員の出勤簿に記録された職員の採用年月日及び退職年月日を示す情報並びにその職員が特定の日に出勤し,又は出張したことを示す情報及びその職員が特定の日に職務専念義務の免除を受け,厚生事業に参加し,又は欠勤したことを示す情報で公務に従事しなかった個別的内容や具体的理由までが明らかになるものではないものは,旧富山県…
事件番号: 平成13(行ヒ)289 / 裁判年月日: 平成18年3月10日 / 結論: 破棄自判
国民健康保険診療報酬明細書(レセプト)に記録された個人の診療に関する情報について,実際に受けた診療の内容と異なることを理由として京都市個人情報保護条例(平成5年京都市条例第1号。平成16年京都市条例第24号による改正前のもの)に基づく個人情報の訂正の請求がされた場合において,(1)上記レセプトは,保険医療機関が国民健康…
事件番号: 平成19(許)23 / 裁判年月日: 平成19年12月11日 / 結論: 破棄自判
1 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には,同情報は,金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有するときは別として,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されない。 2 A,Bを当事者と…