公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づき個人情報の記録された公文書の公開請求を本人及びその配偶者が共同でした場合に,当該公開請求自体から本人自身による請求であることが明らかであり,同条例には自己の個人情報の開示を請求することを許さない趣旨の規定等は存在せず,当時,兵庫県では個人情報保護制度が採用されていなかったという事実関係の下においては,当該情報が個人情報に関する非公開事由を定めた同条例8条1号に該当するとしてされた非公開決定は違法である。
公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づき個人情報の記録された公文書の公開請求を本人及びその配偶者が共同でした場合に当該情報が個人情報に関する非公開事由を定めた同条例8条1号に該当するとしてされた非公開決定が違法とされた事例
公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)8条1号
判旨
情報公開条例のみが制定され個人情報保護制度が未整備な状況下では、自己の個人情報の公開請求に対し、当該個人の権利利益を害さないことが明らかな場合には、非公開事由の「個人に関する情報」に該当することを理由に拒否することはできない。
問題の所在(論点)
情報公開条例に基づく公開請求において、請求に係る情報が「請求者本人の個人情報」である場合、同条例上の非公開事由(プライバシー保護条項)を根拠に公開を拒否できるか。また、個人情報保護条例が未整備であることは、その判断に影響を及ぼすか。
規範
情報公開制度と個人情報保護制度は、目的や対象を異にする別個の制度であり、公文書公開請求権の要件等は原則として地方公共団体の立法政策に委ねられる。したがって、請求者は原則として自己の個人情報であることを理由に特別の開示を受けられるわけではない。しかし、両制度は相互に補完し合い公の情報開示を実現する関係にあり、非公開情報の規定は個人の権利利益保護を目的とする。以上にかんがみれば、個人情報保護制度が未採用の状況下で、自己の個人情報の公開請求を許さない規定がない限り、当該個人の権利利益を害さないことが請求自体から明らかなときは、非公開事由(通常他人に知られたくない情報等)に該当することを理由に請求を拒否することはできない。
事件番号: 平成13(行ヒ)83 / 裁判年月日: 平成15年10月28日 / 結論: その他
1 知事の交際費に係る公文書に記録されている交際の相手方である個人が識別され得る情報のうち交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものは,千葉県公文書公開条例(昭和63年千葉県条例第3号)11条2号ロにより同号の情報に当たらない。 2 知事の交際費に係る公文書に記録されている交際の相手方が識…
重要事実
被上告人(妻)とその夫は、兵庫県の公文書公開条例に基づき、上告人(県)に対し、妻の分娩に関する診療報酬明細書の公開を請求した。当時の兵庫県には個人情報保護制度がなく、情報公開条例のみが存在した。県は、当該文書が同条例8条1号の非公開事由(個人の健康状態等に関する情報であって、通常他人に知られたくないもの)に該当するとして、不開示決定(本件処分)を行った。
あてはめ
本件条例8条1号が特定の個人が識別され得る情報を非公開とするのは、当該個人の権利利益を保護するためである。本件において、対象となる情報の主体は請求者である妻自身であることが請求自体から明らかであった。請求者が自ら公開を求めている以上、当該個人(及び共同請求者の配偶者)に開示されても、本号が保護しようとする「当該個人の権利利益」が害されるおそれは全くない。したがって、本件請求に限っては、同号の非公開事由には該当しないと解するのが条例の合理的解釈である。
結論
本件処分は、本来非公開事由に該当しない情報を不開示としたものであり、違法である。自己の個人情報の開示請求については、その性質上、本人の権利利益を害さないことが明らかな限り、プライバシー保護を理由に拒否することはできない。
実務上の射程
個人情報保護制度が未整備だった時代の判断であるが、現行法下でも、情報公開法(又は条例)と個人情報保護法との適用関係が問題となる場面で、「非公開事由の趣旨(目的)から、本人が請求している場合にその趣旨を害するか」という解釈手法として射程を有する。ただし、現在は両制度が分立しているため、まずは各法の適用除外規定や調整規定を確認すべきである。
事件番号: 平成13(行ヒ)348 / 裁判年月日: 平成17年7月14日 / 結論: その他
北九州市の局長の交際費の支出に関する情報で交際の相手方が識別されるものは,交際の相手方及びその内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものなどを除き,旧北九州市情報公開条例(平成元年北九州市条例第22号。平成13年北九州市条例第42号による全部改正前のもの)6条7号所定の非公開情報に該当する。(反対意見があ…
事件番号: 平成13(行ヒ)18 / 裁判年月日: 平成16年2月13日 / 結論: その他
1 京都市交通局の開催した飲食を伴う協議に地下鉄建設事業地域の地元住民の団体に所属する者及び地権者の団体に所属する者が出席したことに関する情報は,同協議が上記各団体に地下鉄建設工事の内容の説明等を行うことなどを目的としていたという事実関係の下においては,京都市公文書の公開に関する条例(平成3年京都市条例第12号)8条1…
事件番号: 平成9(行ツ)152 / 裁判年月日: 平成13年5月29日 / 結論: その他
京都府知事が平成元年度に支出した交際費に係る資金前渡金受払表で交際の相手方が識別され得る情報が記録されているもののうち,個人に対する結婚祝い又は個人に対する受賞祝賀会の祝いに係る祝金に関する情報が記録されている部分は,京都府情報公開条例(昭和63年京都府条例第17号)5条1号及び6号に該当する。
事件番号: 平成12(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成15年12月18日 / 結論: その他
1 広島県公文書公開条例(平成2年広島県条例第1号)9条2号にいう「個人に関する情報」は,個人の思想,信条,健康状態,所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではなく,個人にかかわりのある情報であれば,原則としてこれに当たる。 2 法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)その他の団体を代…