国民健康保険診療報酬明細書(レセプト)に記録された個人の診療に関する情報について,実際に受けた診療の内容と異なることを理由として京都市個人情報保護条例(平成5年京都市条例第1号。平成16年京都市条例第24号による改正前のもの)に基づく個人情報の訂正の請求がされた場合において,(1)上記レセプトは,保険医療機関が国民健康保険法に基づく療養の給付に関する費用を京都市に請求するために自ら行ったとする診療の内容を記載して作成し,京都府国民健康保険団体連合会に提出したものであること,(2)同連合会による審査の後に上記レセプトを取得した京都市は,保険医療機関に対する診療報酬の支払の明細に係る歳入歳出の証拠書類としてこれを保管しており,上記訂正の請求がされた当時,実際の診療内容を直接明らかにするためにこれを管理していたものとは認められないこと,(3)同条例は,実施機関に対して訂正の請求に関する調査権限を付与する特段の規定を置いておらず,実施機関の対外的な調査権限にはおのずから限界があることなど判示の事情の下においては,実施機関がした訂正をしない旨の決定が違法であるということはできない。 (補足意見がある。)
国民健康保険診療報酬明細書に記録された個人の診療に関する情報についてされた京都市個人情報保護条例(平成5年京都市条例第1号。平成16年京都市条例第24号による改正前のもの)に基づく個人情報の訂正をしない旨の決定が違法とはいえないとされた事例
京都市個人情報保護条例(平成5年京都市条例第1号。平成16年京都市条例第24号による改正前のもの)21条1項,京都市個人情報保護条例(平成5年京都市条例第1号。平成16年京都市条例第24号による改正前のもの)23条1項,療養の給付,老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(平成10年厚生省令第99号による改正前のもの)1条1項
判旨
行政機関が管理するレセプト(診療報酬明細書)に記載された診療内容の事実に誤りがあるとしても、その文書の性格上、個人情報保護条例に基づく訂正請求の対象にはならない。
問題の所在(論点)
保険医療機関が作成し、市が公金支出の証拠書類として保管するレセプトの記載内容について、個人情報保護条例に基づく訂正請求をなしうるか。また、その拒絶は適法か。
規範
個人情報保護条例に基づく訂正請求制度の趣旨は、誤った個人情報の利用による権利利益の侵害を防止することにある。しかし、実施機関に特段の調査権限を付与する規定がない場合、訂正義務の有無は、①当該文書の性格(作成目的や証拠的価値)、②実施機関における管理目的(利用の範囲)、③実施機関が有する対外的な調査権限の限界を総合考慮して判断すべきである。
事件番号: 平成9(行ツ)21 / 裁判年月日: 平成13年12月18日 / 結論: 棄却
公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づき個人情報の記録された公文書の公開請求を本人及びその配偶者が共同でした場合に,当該公開請求自体から本人自身による請求であることが明らかであり,同条例には自己の個人情報の開示を請求することを許さない趣旨の規定等は存在せず,当時,兵庫県では個人情報保護制度が採用…
重要事実
被上告人(市民)は、京都市(上告人)が保管する自己の歯科診療レセプトの開示を受けたが、その診療内容に誤りがあるとして、京都市個人情報保護条例に基づき訂正を請求した。当該レセプトは、保険医療機関が作成して連合会に提出し、連合会の審査を経て市に届いたものであり、市はこれを診療報酬支払の「歳入歳出の証拠書類」として保管していた。市は、レセプトの訂正権限や調査権限がないことを理由に訂正しない旨の決定(本件処分)をしたため、被上告人がその取消しを求めて提訴した。
あてはめ
まず、レセプトは保険医療機関が自ら行った診療内容を記載するものであり、実施機関(市)がその内容を直接訂正することは、医療機関の請求内容を明らかにするという「文書の性格」に適さない。次に、市はレセプトを「診療報酬支払の証拠書類」として管理しており、被上告人の実際の診療内容を直接管理する目的で保有しているわけではないため、「個人の権利利益」に直接関わるとは言い難い。さらに、実施機関には医療機関に対する対外的な「調査権限」が不足しており、条例がこのような場合にまで診療内容を調査・訂正することまで要請しているとは解されない。
結論
本件レセプトの診療内容に関する記載を訂正することは、本件条例の定める訂正請求制度において予定されておらず、本件処分は適法である。
実務上の射程
自己の情報の正確性を求める権利にも限界があることを示す。特に、作成主体が外部(医療機関等)にあり、行政が証拠書類として二次的に受領・保管している情報の訂正については、本判決の枠組み(文書の性格・管理目的・調査権限)が射程となる。
事件番号: 平成12(行ヒ)334 / 裁判年月日: 平成15年11月21日 / 結論: その他
1 富山県の職員の出勤簿に記録された職員の採用年月日及び退職年月日を示す情報並びにその職員が特定の日に出勤し,又は出張したことを示す情報及びその職員が特定の日に職務専念義務の免除を受け,厚生事業に参加し,又は欠勤したことを示す情報で公務に従事しなかった個別的内容や具体的理由までが明らかになるものではないものは,旧富山県…
事件番号: 令和4(行ヒ)296 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
矯正管区長が、刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報について、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの)45条1項所定の保有個人情報に当たるとの見解に立脚し、その全部を開示しない旨の決定をした場合において、上記決定当時、公表されていた裁判例や情報公…
事件番号: 平成20(行ヒ)35 / 裁判年月日: 平成21年4月17日 / 結論: その他
1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは,(1…
事件番号: 平成8(行ツ)210 / 裁判年月日: 平成13年3月27日 / 結論: その他
1 大阪府知事の交際費に係る公文書で交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関する情報が記録されているものは,大阪府公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号)8条4号,5号及び9条1号のいずれにも該当しない。 2 大阪府知事が昭和60年1月ないし3月に支出した交際費に係る公文書で交際の相手方が…