1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは,(1)上記母が出生届の提出をけ怠していることにやむを得ない合理的な理由があるとはいえないこと,(2)住民票の記載がされないことにより当該子に看過し難い不利益が生じているとはうかがわれないことなど判示の事情の下では,住民基本台帳法上違法ということはできず,国家賠償法上も違法ではない。 (2につき意見がある。)
1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことが違法ではないとされた事例
(1,2につき)住民基本台帳法8条,住民基本台帳法施行令7条 (1につき)住民基本台帳法14条2項,住民基本台帳法施行令11条,行政事件訴訟法3条1項,行政事件訴訟法3条2項 (2につき)住民基本台帳法14条1項,住民基本台帳法34条,住民基本台帳法施行令12条1項,住民基本台帳法施行令12条2項1号,住民基本台帳法施行令12条3項,国家賠償法1条1項
判旨
出生届が提出されない子につき、市町村長が職権調査による住民票記載をしないことは、社会通念上著しく困難等の特段の事情がない限り、住民基本台帳法に違反せず、国家賠償法上も違法ではない。
問題の所在(論点)
1. 住民票記載の申出に対する応答は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか。 2. 出生届が提出されていない子につき、市町村長が職権で住民票の記載を行う義務を負うか。また、それを行わないことが国家賠償法上の違法を構成するか。
規範
1. 住民票の記載を求める申出に対する不作為の取消訴訟の適否:住基法14条2項所定の申出は、職権発動を促す事実にすぎず、これに対する応答は法令に根拠のない事実上の応答であるから、行政処分に該当しない。 2. 職権記載義務の存否:住基法上、出生届の提出を待って戸籍に基づき記載する方法(届出の催告等)が原則である。職権調査による記載義務が生じるのは、原則的方法によることが社会通念に照らし著しく困難であり、または相当性を欠くなどの「特段の事情」がある場合に限られる。
事件番号: 平成7(行ツ)116 / 裁判年月日: 平成11年1月21日 / 結論: 棄却
一 市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 二 市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を「子」と記載した行為は、住民基本台帳の記載方法等に関して国が定めた右行為当時の住民基本台帳事務処理要領に、世帯主の嫡出子の続柄は「長男」、「二女」等と、非嫡出子のそれは「子」と記…
重要事実
非嫡出子の出生届において、父母の続柄欄を空欄のまま提出した父に対し、区長は補正を求めたが拒否されたため、出生届を受理しなかった。父は住民票の記載を申し出たが、区長は出生届が受理されていないことを理由に記載しない旨を応答(本件応答)し、その後も職権による記載を行わなかった。父母は、本件応答の取消しおよび記載しない不作為が違法であるとして国家賠償を請求した。
あてはめ
1. 本件応答は、住基法上の応答義務を伴わない事実上の行為であり、処分性を欠く。 2. 原則として届出を待つべきであり、本件では母が信条に基づき適正な届出を怠っているにすぎず、届出が社会通念上著しく困難な「特段の事情」は認められない。また、選挙権等の不利益も現時点では現実化しておらず、行政サービスも概ね提供されている。したがって、職権調査による記載義務は発生しておらず、区長の不作為に住基法上の違法も、国賠法上の職務上の義務違反も認められない。
結論
1. 取消請求に係る訴えは、処分性を欠くため不適法として却下すべきである。 2. 国家賠償請求については、区長に職権記載義務があるとはいえず、棄却すべきである。
実務上の射程
住民票の職権記載に関する市町村長の裁量を広く認め、戸籍との連動性を重視した判例。住民票不記載による「看過し難い不利益」が具体化していない段階では、届出義務者の主観的信条による届出拒絶を理由とした職権記載義務は認められないという規範を示す。答案では、住基法34条の職権調査の性格を「職権発動を促すもの」と整理する際に活用する。
事件番号: 平成24(行ツ)399 / 裁判年月日: 平成25年9月26日 / 結論: 棄却
戸籍法49条2項1号の規定のうち,出生の届出に係る届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべきものと定める部分は,憲法14条1項に違反しない。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成14(行ヒ)189 / 裁判年月日: 平成15年6月26日 / 結論: 棄却
市町村長は,住民基本台帳法の適用が除外される者以外の者から同法の規定による転入届があった場合に,その者に新たに当該市町村の区域内に住所を定めた事実があれば,法定の届出事項に係る事由以外の事由を理由として転入届を受理しないことはできず,住民票を作成しなければならない。
事件番号: 平成19(行ヒ)137 / 裁判年月日: 平成20年10月3日 / 結論: 棄却
Xが,都市公園法に違反して,都市公園内に不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所とし,公園施設である水道設備等を利用して日常生活を営んでいるなど原判示の事実関係の下においては,Xは,上記テントの所在地に住所を有するものとはいえない。
事件番号: 平成15(許)37 / 裁判年月日: 平成15年12月25日 / 結論: 棄却
1 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において,家庭裁判所は,審判手続に提出された資料,公知の事実等に照らし,当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには,当該市町村長に対し,当該出生届の受理を命ずること…