1 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において,家庭裁判所は,審判手続に提出された資料,公知の事実等に照らし,当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには,当該市町村長に対し,当該出生届の受理を命ずることができる。 2 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字である「曽」の字は,社会通念上明らかに常用平易な文字であり,子の名に用いることができる。
1 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において家庭裁判所が当該文字が常用平易であることを理由に当該出生届の受理を命ずることの可否 2 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字である「曽」の字を子の名に用いることの可否
戸籍法50条,戸籍法118条,戸籍法施行規則60条,戸籍法施行規則別表第二,特別家事審判規則15条
判旨
戸籍法施行規則60条が社会通念上明らかに常用平易な文字を子の名に用いることができる文字として定めない場合、その限りで同条は親法たる戸籍法50条の委任の趣旨を逸脱し無効である。裁判所は、当該文字が社会通念上明らかに常用平易と認められるときには、市町村長に対し出生届の受理を命じることができる。
問題の所在(論点)
戸籍法施行規則60条に定められていない文字を用いた出生届の不受理処分の当否、および同条が網羅していない「社会通念上明らかに常用平易な文字」の取り扱いが問題となる。
規範
戸籍法50条1項が子の名に「常用平易な文字」を求める趣旨は命名の簡明化にある。同条2項に基づく施行規則60条の委任は、社会通念や時代の推移に応じた専門的判断を委ねるものであるが、社会通念上明らかに常用平易な文字を排斥することは許されない。したがって、施行規則に定めがない文字であっても、社会通念上明らかに常用平易と認められる場合には、同条は委任の範囲を逸脱し無効となる。裁判所は、資料や公知の事実に基づき、当該文字の常用平易性を審査・決定する権限を有する。
事件番号: 平成25(許)26 / 裁判年月日: 平成26年4月14日 / 結論: 破棄自判
戸籍事務管掌者は,親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出について,当該審判が無効であるためその判断内容に係る効力が生じない場合を除き,当該審判の法令違反を理由に上記届出を不受理とする処分をすることができない。
重要事実
相手方は、子の名に「曽」の字を用いた出生届の追完届を提出したが、抗告人(戸籍事務管掌者)は、「曽」が施行規則60条所定の文字でないことを理由に不受理処分とした。これに対し相手方が不服申立てを行った。なお、「曽」の字は平仮名・片仮名の母体であり、これを含む常用漢字が複数存在し、地名や氏名にも広く使われている実態があった。
あてはめ
「曽」の字は古くから用いられ、仮名の由来でもある点、当該文字を構成要素とする常用漢字が5字存在し施行規則に含まれている点、さらに氏や地名として国民に広く知られている点に照らせば、社会通念上明らかに常用平易な文字であると認められる。したがって、同文字を施行規則60条に定めていない点は、戸籍法50条の委任の趣旨を逸脱しており、同文字を理由とする不受理処分は違法である。
結論
「曽」の字は社会通念上明らかに常用平易な文字であり、これを用いた出生届の不受理処分は許されない。原審が受理を命じた判断は正当である。
実務上の射程
行政立法(法務省令)による委任の限界を画した判例である。答案上は、法律の委任に基づく規定が、親法の目的や社会通念に照らして過剰な制限を課している場合の「委任逸脱」の論理として活用できる。特に、形式的な限定列挙が実態と乖離している場合の救済法理として重要である。
事件番号: 平成18(許)47 / 裁判年月日: 平成19年3月23日 / 結論: 破棄自判
1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しない。 2 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合においても,出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であり,出生した子…
事件番号: 平成28(許)49 / 裁判年月日: 平成29年5月17日 / 結論: 破棄自判
戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出が同項の期間内にされなかった場合において,出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものの父母について,戸籍に記載されておらず,本籍及び戸籍上の氏名がないという事情のみをもって,同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断には,違法…
事件番号: 平成20(行ヒ)35 / 裁判年月日: 平成21年4月17日 / 結論: その他
1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは,(1…
事件番号: 令和2(ク)102 / 裁判年月日: 令和3年6月23日 / 結論: 棄却
民法750条及び戸籍法74条1号は,憲法24条に違反しない。 (補足意見,意見及び反対意見がある。)