1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しない。 2 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合においても,出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であり,出生した子とその子を懐胎,出産していない女性との間には,その女性が卵子を提供していたとしても,母子関係の成立は認められない。 (2につき補足意見がある。)
1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判と民訴法118条3号にいう公の秩序 2 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母
(1につき)民訴法118条3号,民法第4編第3章第1節 実子 (2につき)民法772条1項
判旨
代理出産により外国裁判所が認めた親子関係は、懐胎・出産した女性を母とする我が国の民法上の基本原則に反するため、公序良俗(民訴法118条3号)に抵触し、我が国ではその効力を有しない。
問題の所在(論点)
代理出産によって出生した子と、卵子を提供したが出産はしていない女性との間に、外国裁判所の判決を承認する形で実親子関係(嫡出親子関係)を認められるか。具体的には、当該外国判決が民訴法118条3号の「公の秩序」に反しないといえるか、および日本民法下での母子関係の成否が問題となる。
規範
外国裁判所の判決が民訴法118条により効力を認められるためには、その内容が我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものでないことを要する(同条3号)。実親子関係を定める基準は一義的に明確かつ一律であるべき公益上の事柄であり、我が国の民法は、懐胎・出産という客観的事実により母子関係が当然に成立することを基本原則としている。したがって、この原則に反して、懐胎・出産していない女性との間に実親子関係の成立を認める外国判決は、公の秩序に反し無効である。
事件番号: 平成25(許)26 / 裁判年月日: 平成26年4月14日 / 結論: 破棄自判
戸籍事務管掌者は,親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出について,当該審判が無効であるためその判断内容に係る効力が生じない場合を除き,当該審判の法令違反を理由に上記届出を不受理とする処分をすることができない。
重要事実
日本人夫婦(相手方ら)が、妻の卵子と夫の精子を用いた体外受精卵を米国の女性(代理母)に移植し、米国ネバダ州で双子を得た。ネバダ州の裁判所は、代理出産契約に基づき、相手方らを血縁上・法律上の実父母と確定する裁判(本件裁判)を行い、同州は相手方らを父母とする出生証明書を発行した。相手方らは日本帰国後、本件裁判に基づき自らを父母とする嫡出子出生届を提出したが、市区町村長がこれを受理しなかったため、受理を命ずる審判を申し立てた。
あてはめ
我が国では、民法772条等の規定および判例(最判昭37.4.27)により、出産という客観的事実に基づき母子関係が一義的に確定される。本件裁判は、この原則に反し、懐胎・出産していない相手方(妻)を母と認めるものであり、日本の身分法秩序の根幹に抵触する。生殖補助医療の進展という事情を考慮しても、現行法の解釈として出産によらない母子関係を認める規定は存在しない。したがって、本件裁判の内容は日本の公序に反し、その効力は認められない。また、日本法(通則法28条1項)を準拠法としても、出産事実のない相手方らとの間に嫡出親子関係は成立しない。
結論
本件裁判は民訴法118条3号の公序に反するため我が国で効力を有さず、相手方らと本件子らとの間に嫡出親子関係は認められない。よって出生届の受理を拒絶した処分は適法であり、受理を命じた原決定は破棄される。
実務上の射程
代理母出産における母子関係の基準を「分娩事実」に限定した確定判決である。血縁関係や外国判決があっても、現行法上は特別養子縁組等の別手段を検討すべきことを示唆している。答案上は、外国判決の承認要件(118条)の解釈において、日本の身分法上の基本原則(分娩者=母)が「公序」に含まれることを論じる際の決定的な根拠となる。
事件番号: 平成28(許)49 / 裁判年月日: 平成29年5月17日 / 結論: 破棄自判
戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出が同項の期間内にされなかった場合において,出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものの父母について,戸籍に記載されておらず,本籍及び戸籍上の氏名がないという事情のみをもって,同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断には,違法…
事件番号: 平成15(許)37 / 裁判年月日: 平成15年12月25日 / 結論: 棄却
1 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において,家庭裁判所は,審判手続に提出された資料,公知の事実等に照らし,当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには,当該市町村長に対し,当該出生届の受理を命ずること…
事件番号: 昭和26(ク)191 / 裁判年月日: 昭和26年10月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告が適法となるのは、法律により特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法適合性に関する判断を不当とするもの(現行民訴法336条1項に相当)に限られる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの民事事件の決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由は…
事件番号: 令和2(ク)102 / 裁判年月日: 令和3年6月23日 / 結論: 棄却
民法750条及び戸籍法74条1号は,憲法24条に違反しない。 (補足意見,意見及び反対意見がある。)