戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出が同項の期間内にされなかった場合において,出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものの父母について,戸籍に記載されておらず,本籍及び戸籍上の氏名がないという事情のみをもって,同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断には,違法がある。
戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出について同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
戸籍法104条,国籍法12条
判旨
戸籍法104条3項の「責めに帰することができない事由」の存否は、国籍留保制度の趣旨に照らし、客観的にみて届出の障害となる事情の有無や程度を勘案して判断すべきである。父母が戸籍に記載されておらず本籍等がないという事情は、出生届や国籍留保の届出をすることの客観的な障害とはいえず、同条項の事由には当たらない。
問題の所在(論点)
国外で出生し重国籍となった子の国籍留保の届出に関し、届出義務者である父母が戸籍に記載されておらず本籍や戸籍上の氏名を有しないことが、戸籍法104条3項にいう「責めに帰することができない事由」に該当するか。
規範
戸籍法104条3項にいう「責めに帰することができない事由」の存否は、重国籍の発生回避という国籍留保制度の趣旨及び子の法的地位の早期確定という同条1項の趣旨に加え、同条3項が「天災」を例示していることに照らし、客観的にみて国籍留保の届出をすることの障害となる事情の有無やその程度を勘案して判断すべきである。
重要事実
中国で出生し重国籍となった子ら(本件子ら)の父母(相手方4名)は、日本国籍を有する父(A)の子であるが、本件改正法施行前に出生したため国籍留保制度の対象外であった。Aが自らの出生届を出し戸籍に記載された後、相手方4名も出生届を出して戸籍に記載された。その後、相手方4名は本件子らに係る出生届および国籍留保の届出等を行ったが、市町村長は、出生の日から3箇月(104条1項)を経過しているとして不受理処分とした。
事件番号: 平成18(許)47 / 裁判年月日: 平成19年3月23日 / 結論: 破棄自判
1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しない。 2 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合においても,出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であり,出生した子…
あてはめ
戸籍法上、父母に本籍がない場合でも、その旨を記載して出生の届出をすることは可能であり(34条1項、26条)、届出自体に法的障害はない。本件において、相手方4名が戸籍に記載されていなかったという事情は、客観的にみて本件子らに係る国籍留保の届出をすることの障害とならないことは明らかである。したがって、期間内に届出ができなかったことについて、天災に準ずるような「責めに帰することができない事由」があったとはいえない。
結論
本件各届出は届出期間を経過しており、本件子らは国籍を喪失しているため、これらを不受理とした処分は適法である。原決定を破棄し、抗告を棄却する。
実務上の射程
国籍法・戸籍法上の期間制限の厳格性を示す。特に、戸籍法104条3項の例外規定が「天災」と同等の客観的・物理的障害を想定していることを明らかにした点で、実務上のハードルは極めて高いと解される。答案上は、制度趣旨から規範を導く際の論理構成として有用である。
事件番号: 平成25(許)26 / 裁判年月日: 平成26年4月14日 / 結論: 破棄自判
戸籍事務管掌者は,親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出について,当該審判が無効であるためその判断内容に係る効力が生じない場合を除き,当該審判の法令違反を理由に上記届出を不受理とする処分をすることができない。
事件番号: 平成15(許)37 / 裁判年月日: 平成15年12月25日 / 結論: 棄却
1 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において,家庭裁判所は,審判手続に提出された資料,公知の事実等に照らし,当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには,当該市町村長に対し,当該出生届の受理を命ずること…
事件番号: 昭和26(ク)59 / 裁判年月日: 昭和26年5月31日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、原決定に憲法判断の不当がある場合に限られ、単なる民事訴訟法違反の主張は適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案である。抗告人は、その理由として憲法違反を掲げていたが、その実質的な内容…
事件番号: 昭和24(オ)160 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の原因となる申請に自由意思を抑圧しない程度の強迫という瑕疵があっても、処分は当然無効とはならず、出訴期間を経過した後はその取消しを求めることもできない。 第1 事案の概要:上告人らは、日本国籍回復許可の申請を行い、これに基づき国籍回復許可の行政処分を受けた。その後、上告人らは当該申請が強迫…