判旨
行政処分の原因となる申請に自由意思を抑圧しない程度の強迫という瑕疵があっても、処分は当然無効とはならず、出訴期間を経過した後はその取消しを求めることもできない。
問題の所在(論点)
行政処分の基礎となる申請行為に強迫等の瑕疵がある場合、当該処分の効力(無効・取消し)にどのような影響を及ぼすか。また、意思表示の瑕疵を理由とする取消訴訟において出訴期間の制限が適用されるか。
規範
1. 行政処分の前提となる申請行為に「自由意思を抑圧する程度」の強迫がある場合は、申請は当然無効であり、これに基づく処分も当然無効となる。 2. 一方、自由意思を抑圧する程度に至らない強迫(瑕疵)があるに過ぎない場合、これに基づく行政処分は当然無効とはならず、公定力により有効なものとして取り扱われる。この場合、当該処分は取消訴訟の対象となり得るにとどまり、出訴期間等の訴訟要件を満たさない限り、その効力を否定することはできない。
重要事実
上告人らは、日本国籍回復許可の申請を行い、これに基づき国籍回復許可の行政処分を受けた。その後、上告人らは当該申請が強迫によってなされたものであると主張し、国籍回復許可処分の無効確認および取消しを求めて提訴した。事実認定によれば、本件における強迫は上告人らの自由意思を抑圧する程度のものではなかった。また、取消しの訴えについては、民事訴訟法応急措置法8条に定める出訴期間(処分を知った日から6か月以内、かつ処分の日から3年以内)を経過した後に提起されていた。
あてはめ
本件申請において上告人らの自由意思を抑圧する程度の強迫があったとは認められない。したがって、申請行為が当然無効であるとはいえず、これに基づく国籍回復許可処分も当然無効とはならない。仮に自由意思を抑圧しない程度の強迫が存在したとしても、それは処分の取消原因になり得るに過ぎない。本件の取消請求については、上告人らが処分を知った日から6か月、および処分の日から3年という当時の出訴期間をいずれも経過した後に提起されている。よって、本案の適否を判断するまでもなく、訴訟要件を欠く不適法な訴えであると解される。
結論
本件処分の無効確認請求は理由がなく、取消請求は出訴期間を徒過しており却下されるべきである。したがって、上告を棄却する。
事件番号: 昭和24(オ)119 / 裁判年月日: 昭和32年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出生による日本国籍取得後の継続的な国籍保有を求める訴えについて、多数意見は特段の不適法を指摘せず事実認定の当否を本案判断の対象としている。これにより、現在の国籍確認の訴えは、公法上の権利義務の関係として確認の利益が認められるとの前提に立つものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、出生によって日…
実務上の射程
私人による申請行為に瑕疵がある場合の行政処分の効力を論ずる際のリーディングケースである。答案上は、申請に重大かつ明白な瑕疵(意思能力の欠如や絶対的強迫等)がある場合には処分も無効となり得るが、それ以外の瑕疵(相対的強迫や錯誤等)は取消事由にとどまり、公定力および出訴期間の制限を受けるという論理構成で活用する。
事件番号: 昭和34(オ)32 / 裁判年月日: 昭和34年11月10日 / 結論: 棄却
出入国管理令第五〇条に基き在留の特別許可を与えるかどうかは、法務大臣の自由裁量に属するものと解すべきである。
事件番号: 平成6(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 棄却
法務大臣が、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法一条の規定に基づく許可を受けて本邦で永住することができる地位を有していた者に対し、外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)一四条一項に基づく指紋の押なつを拒否していることを理由とし…