戸籍事務管掌者は,親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出について,当該審判が無効であるためその判断内容に係る効力が生じない場合を除き,当該審判の法令違反を理由に上記届出を不受理とする処分をすることができない。
戸籍事務管掌者が親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出を当該審判の法令違反を理由に不受理とすることの可否
戸籍法79条,戸籍法121条,民法819条6項
判旨
子が実親の一方及び養親の共同親権に服する場合、民法819条6項による親権者変更はできないが、誤ってこれを認めた審判であっても無効でない限り、戸籍事務管掌者は法令違反を理由に届出を不受理にできない。確定審判には形成力があり、戸籍事務における審査権限は審判の無効をもたらす重大な法令違反の有無に限られるため、受理を命ずべきである。
問題の所在(論点)
1. 子が実親の一方および養親の共同親権に服する場合、民法819条6項に基づき親権者を他方の実親に変更できるか。 2. 誤った法令解釈に基づく親権者変更の確定審判に対し、戸籍事務管掌者は不受理処分をなし得るか。
規範
1. 民法819条の構造および同条6項の文理に照らせば、子が実親の一方および養親の共同親権に服する場合、親権者を他方の実親に変更することは同項の予定しないところであり、許されない。 2. 審判による親権者変更は、確定審判の形成力によって効力が生じる。戸籍事務管掌者の審査権限は、裁判所が判断すべき事項については、審判の無効をもたらす重大な法令違反の有無に限られる。したがって、審判が無効でない限り、法令違反を理由に届出を不受理とすることはできない。
重要事実
実父である抗告人は、実母Bとの離婚時にBを親権者としたが、BがCと再婚してCが子Aと養子縁組をしたため、AはB・Cの共同親権に服していた。Cによる虐待を理由に、抗告人は親権者変更の審判を申し立て、家庭裁判所は819条6項に基づき親権者をB・Cから抗告人に変更する審判を下し、これが確定した。抗告人がこの確定審判に基づき親権者変更の届出をしたところ、市町村長(相手方)は「法律上の根拠がない審判である」として不受理処分とした。
事件番号: 平成18(許)47 / 裁判年月日: 平成19年3月23日 / 結論: 破棄自判
1 民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しない。 2 女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合においても,出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であり,出生した子…
あてはめ
1. 819条1項から5項は離婚等の際の単独親権を前提としており、同条6項もそれを承けた規定であるから、実親と養親の共同親権からの変更は予定されていない。よって本件審判の法令解釈は誤りである。 2. しかし、親権者変更は確定審判の形成力により生じ、受理されないと戸籍の公証機能が害される。本件審判は819条6項の解釈を誤ったものであるが、直ちに無効とはいえず、重大な法令違反(無効事由)はない。したがって、相手方は届出を受理しなければならない。
結論
本件不受理処分は違法であり、相手方は本件届出を受理すべきである。
実務上の射程
実体法上の解釈(819条6項の適用範囲)と、手続法・戸籍法上の効力(確定審判の形成力と審査権の範囲)を切り分けて論じる際の規範となる。特に、実体法上は誤った裁判であっても、手続的に確定した以上は行政窓口でその当否を審査できないという「確定判決・審判の尊重」の原則を示すものとして重要である。
事件番号: 平成28(許)49 / 裁判年月日: 平成29年5月17日 / 結論: 破棄自判
戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出が同項の期間内にされなかった場合において,出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものの父母について,戸籍に記載されておらず,本籍及び戸籍上の氏名がないという事情のみをもって,同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断には,違法…
事件番号: 平成15(許)37 / 裁判年月日: 平成15年12月25日 / 結論: 棄却
1 戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字を用いて子の名を記載したことを理由とする市町村長の出生届の不受理処分に対する不服申立て事件において,家庭裁判所は,審判手続に提出された資料,公知の事実等に照らし,当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには,当該市町村長に対し,当該出生届の受理を命ずること…
事件番号: 昭和26(ク)191 / 裁判年月日: 昭和26年10月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告が適法となるのは、法律により特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法適合性に関する判断を不当とするもの(現行民訴法336条1項に相当)に限られる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの民事事件の決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由は…
事件番号: 昭和25(ク)156 / 裁判年月日: 昭和26年3月31日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告申立ては、民事訴訟法上の特別抗告(現行336条)に限定され、その抗告理由は憲法適合性の判断に関する不服に限られる。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定において法律・命令・規則・処分が憲法に適合するか否かの判断を…