市町村長は,住民基本台帳法の適用が除外される者以外の者から同法の規定による転入届があった場合に,その者に新たに当該市町村の区域内に住所を定めた事実があれば,法定の届出事項に係る事由以外の事由を理由として転入届を受理しないことはできず,住民票を作成しなければならない。
住民基本台帳法の規定による転入届を法定の届出事項に係る事由以外の事由を理由として受理しないことの可否
住民基本台帳法6条,住民基本台帳法(平成11年法律第133号による改正前のもの)8条,住民基本台帳法(平成11年法律第133号による改正前のもの)22条,住民基本台帳法施行令7条1項,住民基本台帳法施行令11条
判旨
住民基本台帳法上の転入届に対し、市町村長は住所を定めた事実がある限り、法定の届出事項以外の事由を理由としてこれを受理しないことは許されない。
問題の所在(論点)
住民基本台帳法22条に基づく転入届に対し、市町村長が「地域の安全確保」といった法定外の事由を理由として、受理を拒否することが許されるか。
規範
住民基本台帳法(以下「法」という。)の規定及び趣旨に鑑み、市町村長は、法22条に基づく転入届があった場合、当該住民が市町村の区域内に住所を定めた事実があれば、法定の届出事項に係る事由以外の事由を理由として受理を拒否することはできず、住民票を作成する義務を負う。
重要事実
特定の団体(いわゆるオウム真理教)の信者が、新たな居住地として転入届を提出した。これに対し、受理によって地域の秩序が破壊され、住民の生命や身体の安全が害される高度な危険性があるといった特別の事情を理由に、市町村長が当該転入届の受理を拒否した事案。
事件番号: 平成19(行ヒ)137 / 裁判年月日: 平成20年10月3日 / 結論: 棄却
Xが,都市公園法に違反して,都市公園内に不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所とし,公園施設である水道設備等を利用して日常生活を営んでいるなど原判示の事実関係の下においては,Xは,上記テントの所在地に住所を有するものとはいえない。
あてはめ
住民基本台帳は、居住関係の事実と合致した正確な記録をすることによって、公証や行政事務の基礎とするものである。本件において、上告人(市町村側)は地域の秩序破壊や住民の生命・身体への危険という「特別の事情」を主張するが、住所を定めた事実が存する以上、実定法上の根拠を欠く独自の見解にすぎない。したがって、法定の届出事項以外の事情を考慮して受理を拒むことは許されないと判断される。
結論
転入届の受理を拒否することは許されない。住所を定めた事実がある以上、市町村長は住民票を作成しなければならない。
実務上の射程
行政庁の審査権限が「形式的審査権」に限定される場面を示す重要判例。住民基本台帳法の目的が、行政管理の便宜と居住事実の公証にあることから、警察的・政治的配慮による受理拒否を否定している。行政法における「拘束的行政行為」や「届出」の性質を論じる際、裁量の余地を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 平成20(行ヒ)35 / 裁判年月日: 平成21年4月17日 / 結論: その他
1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは,(1…
事件番号: 平成7(行ツ)116 / 裁判年月日: 平成11年1月21日 / 結論: 棄却
一 市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 二 市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を「子」と記載した行為は、住民基本台帳の記載方法等に関して国が定めた右行為当時の住民基本台帳事務処理要領に、世帯主の嫡出子の続柄は「長男」、「二女」等と、非嫡出子のそれは「子」と記…
事件番号: 平成22(行ヒ)124 / 裁判年月日: 平成23年6月14日 / 結論: 破棄自判
市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり,その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が,市長から,その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において,上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結するこ…