一 市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 二 市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を「子」と記載した行為は、住民基本台帳の記載方法等に関して国が定めた右行為当時の住民基本台帳事務処理要領に、世帯主の嫡出子の続柄は「長男」、「二女」等と、非嫡出子のそれは「子」と記載することと定めており、右市長もこれに従って右続柄の記載をしたものであり、右の定めが明らかに住民基本台帳法の解釈を誤ったものということはできないなど判示の事情の下においては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものとはいえず、右行為には国家賠償法一条一項にいう違法がない。
一 市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為と抗告訴訟の対象 二 市長が住民票に非嫡出子の世帯主との続柄を「子」と記載した行為に国家賠償法1条1項にいう違法がないとされた事例
住民基本台帳法6条1項,住民基本台帳法7条,戸籍法49条2項,行政事件訴訟法3条,国家賠償法1条1項,民法第4編第3章第1節実子
判旨
住民票への続柄記載行為は、新たな権利義務を形成するものではなく抗告訴訟の対象(処分性)を欠く。また、事務処理要領に従った記載は、明らかに法令解釈を誤っている等の特段の事情がない限り、国家賠償法上の違法性を認められない。
問題の所在(論点)
1. 住民票に世帯主との続柄を記載する行為に、抗告訴訟の対象となる行政処分性(行政事件訴訟法3条2項)が認められるか。 2. 事務処理要領に従い嫡出子と非嫡出子を区別して記載した行為に、国家賠償法1条1項の違法性が認められるか。
規範
1. 処分性:行政庁の行為が、国民の権利義務を新たに形成し、またはその範囲を確定する法的効果を有するか。公証行為にすぎない場合は原則として処分性を欠くが、選挙権行使のように法的効果が結びついている場合は例外的に認められる。 2. 国賠法上の違法性:公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と行為をしたと認められる場合に限られる。特に上位機関の事務処理要領に従った場合、それが明らかに法令解釈を誤っている等の特段の事情がない限り、注意義務違反は認められない。
事件番号: 平成20(行ヒ)35 / 裁判年月日: 平成21年4月17日 / 結論: その他
1 出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 母がその戸籍に入る子につき適法な出生届を提出していない場合において,特別区の区長が住民である当該子につき上記母の世帯に属する者として住民票の記載をしていないことは,(1…
重要事実
武蔵野市長が、住民基本台帳法に基づき、住民票の世帯主との続柄欄に、非嫡出子である上告人に対し「子」と記載した(嫡出子の場合は「長男」等と記載される)。上告人らは、この記載行為の取消しおよび義務付けを求めるとともに、差別的記載により精神的苦痛を受けたとして国家賠償を請求した。
あてはめ
1. 処分性について:住民票への記載は本来公証行為であり、直接的な法的効果を持たない。選挙人名簿登録に影響する氏名等の記載と異なり、続柄の記載はいかなる法的効果も有しないため、処分性は認められない。 2. 国賠法上の違法性について:当時の事務処理要領は戸籍法の取扱いに準じて区別を定めており、住民票と戸籍の密接な関係に照らせば、明らかに法令解釈を誤ったものとはいえない。市長がこの要領に従ったことは、職務上の注意義務を尽くさず漫然と行ったものとは評価できず、権利侵害の有無にかかわらず違法性を欠く。
結論
1. 続柄記載行為は行政処分に当たらないため、取消訴訟等は不適法として却下される。 2. 被上告人が職務上の注意義務に違反したとはいえないため、国家賠償請求は棄却される。
実務上の射程
行政法における「処分性」の判断枠組み、特に事実上の行為や公証行為における法的効果の有無を論ずる際の重要判例。また、国家賠償法において「法令解釈」が絡む場合の過失(違法性)の判断基準として、行政庁が通達や要領に従うことの正当化根拠を示す際に引用すべきである。
事件番号: 平成17(行ヒ)163 / 裁判年月日: 平成19年12月7日 / 結論: 棄却
1 海岸法37条の4の規定に基づく一般公共海岸区域の占用の許可の申請があった場合において,当該占用が当該一般公共海岸区域の用途又は目的を妨げないときであっても,海岸管理者は,同法の目的等を勘案した裁量判断として占用の許可をしないことが相当であれば,占用の許可をしないことができる。 2 採石業等を目的とする会社が,岩石の…
事件番号: 平成25(許)26 / 裁判年月日: 平成26年4月14日 / 結論: 破棄自判
戸籍事務管掌者は,親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出について,当該審判が無効であるためその判断内容に係る効力が生じない場合を除き,当該審判の法令違反を理由に上記届出を不受理とする処分をすることができない。
事件番号: 昭和46(あ)2696 / 裁判年月日: 昭和48年3月15日 / 結論: 棄却
住民基本台帳法に基づく住民票の原本は、刑法一五七条一項にいう「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」にあたる。