傷害致死被告事件において接見等禁止の裁判に対する準抗告を棄却した原決定に刑訴法81条,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
刑訴法81条,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
判旨
被告人が接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるといえない場合や、公判準備の必要性が高い場合には、刑訴法81条に基づく接見等禁止の必要性は認められず、これを維持する決定は同条の解釈適用を誤った違法がある。
問題の所在(論点)
勾留中の被告人に対し、刑訴法81条に基づき弁護人等以外の者との接見等を禁止する決定、およびその一部解除申請を認めなかった準抗告棄却決定において、罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由および接見等禁止の必要性の判断を誤った違法があるか。
規範
刑訴法81条に基づく接見等禁止の判断にあたっては、被告人が関係者に対し直接または第三者を介して働き掛けるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の有無を検討すべきである。特に、弁護側の専門家(鑑定医等)との接見については、特段の事情がない限り、実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるとはいえず、公判準備の必要性も考慮すべきである。また、接見等禁止の終期を画一的に定めることは、手続の経過による罪証隠滅のおそれの変動を看過するおそれがあるため、判断時点での具体的な事情(争点の絞り込み、証拠構造の変化等)に照らして禁止の必要性を個別具体的に検討しなければならない。
重要事実
被告人は父親に対する傷害致死罪で起訴され、第1回公判期日終了まで弁護人等以外の者との接見等を禁止する旨の決定を受けた。公判前整理手続において、争点は責任能力の有無・程度に絞られ、弁護人は責任能力の鑑定を依頼したA医師及び被告人の妹との接見等禁止の一部解除を求めた。原決定は、被告人が関係者に働きかけ罪証隠滅を行う疑いがあるとしてこれを棄却した。しかし、A医師については、検察官も接見による罪証隠滅のおそれに関する具体的な事情を主張しておらず、弁護側には集中審理に向けた準備の必要性が高い状況にあった。また、被告人の妹らについても、原決定は禁止を維持すべき具体的なおそれの有無を検討した形跡がなかった。
事件番号: 令和7(し)672 / 裁判年月日: 令和7年8月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】勾留中の接見等禁止の裁判を是認するには、被疑者が実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあることを基礎付ける具体的事情が必要であり、それを指摘せずに接見禁止を認めた決定は違法である。 第1 事案の概要:被疑者はアパート浴室に携帯電話を差し入れ性的部位を撮影しようとしたが未遂に終わったという住居侵入・…
あてはめ
まず、接見等禁止の終期を「第1回公判期日終了まで」と一律に定めた原々裁判は、公判前整理手続の経過による罪証隠滅のおそれの変動を考慮せず、不当に長期間の制限を課す可能性がある。次に、本件では争点が責任能力に絞られており、弁護側の鑑定医(A医師)については、接見により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれは認められない。むしろ、公判準備のためにA医師と接見する必要性は高いといえる。さらに、被告人の妹等の他の関係者についても、単に「働きかけの疑い」を抽象的に述べるのみで、勾留に加えてあえて接見等までをも禁止すべき程度の具体的必要性について原決定は検討を尽くしていない。したがって、原決定は同法81条等の解釈適用を誤り、個別具体的な検討を欠いた評価語で結論を導いたものといえる。
結論
原決定には刑訴法81条、426条の解釈適用を誤った違法があり、これを取り消さなければ著しく正義に反する。したがって、原決定を取り消し、本件を原裁判所に差し戻す。
実務上の射程
本決定は、公判前整理手続中の接見等禁止の継続について、争点の明確化や立証準備の必要性といった後発的事情を考慮して厳格に判断すべきことを示した。特に私的鑑定医等との接見制限について、検察官による具体的懸念の立証がない限り、防御権尊重の観点から禁止は許容されないとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和47(し)21 / 裁判年月日: 昭和47年4月28日 / 結論: 棄却
一 原決定が本件準抗告申立(「抗告申立書」と題する準抗告申立書参照)の理由の追加として適法と認められる「抗告理由申立書」記載の主張(同書面参照)に対して判断を示さなかつたのは、違法である。 二 (参考)「抗告申立書」・「抗告理由申立書」および原決定は最高裁判所裁判集(刑事)登載の本件決定に添えて登載されている。
事件番号: 平成13(し)48 / 裁判年月日: 平成13年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告事件の勾留と余罪である被疑事件の勾留が競合する場合、検察官は被告事件の防御権を不当に制限しない限り、被告事件のみの弁護人に対しても接見等指定権を行使できる。 第1 事案の概要:被告人は、既に起訴された被告事件によって勾留されていたが、同時に別件である被疑事件(余罪)についても勾留がなされ、両者…
事件番号: 昭和53(し)54 / 裁判年月日: 昭和53年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留及び接見等禁止の措置を講じることと、勾留中に自白を強要することとは別個の問題である。したがって、勾留等の措置自体が直ちに憲法38条1項の自己負罪拒否特権に抵触するものではない。 第1 事案の概要:被告人(抗告人)に対し、勾留及び接見等禁止の措置がとられた。これに対し抗告人は、当該措置がなされる…
事件番号: 平成7(し)125 / 裁判年月日: 平成7年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法39条1項の接見交通権が認められる「弁護人となろうとする者」に該当するか否かは、客観的な選任の蓋然性により判断されるべきであり、多数回の接見にもかかわらず選任の形跡がない等の事情がある場合には、その疎明が不十分として同権利を否定し得る。 第1 事案の概要:申立人は、別件の被疑者と弁護人と…