本件の勾留及び接見等禁止の裁判は自白を強要するためにとられた措置で憲法三八条一項に違反するという論旨を、実質事実誤認、単なる法令違反の主張として処理した事例
憲法38条1項,刑訴法60条,刑訴法81条,刑訴法433条
判旨
勾留及び接見等禁止の措置を講じることと、勾留中に自白を強要することとは別個の問題である。したがって、勾留等の措置自体が直ちに憲法38条1項の自己負罪拒否特権に抵触するものではない。
問題の所在(論点)
勾留及び接見等禁止の措置を講じることが、憲法38条1項(自己負罪拒否特権)に違反し、自白の強要にあたるか。
規範
身体拘束(勾留)や接見等禁止といった強制処分・付随的措置の適法性と、取調べにおける自白の強要(憲法38条1項違反)は、法的に別個の次元の問題として区別される。したがって、勾留や接見禁止の措置がなされているという事実のみをもって、直ちに憲法38条1項の保障する黙秘権や供述拒否権の侵害があったと解することはできない。
重要事実
被告人(抗告人)に対し、勾留及び接見等禁止の措置がとられた。これに対し抗告人は、当該措置がなされることは勾留中に自白を強要することに繋がり、憲法38条1項(自己負罪拒否特権)に違反するものであると主張して、特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において抗告人は、身体拘束や外部との連絡遮断が自白の強要を招くと主張する。しかし、勾留・接見禁止は証拠隠滅や逃亡の防止を目的とする制度であり、供述を強いる取調べの手法そのものではない。これらの措置がとられていることと自白強要の有無は別個の事象であり、本件主張は実質において勾留等の理由や必要性を争う事実にすぎず、憲法違反の主張には当たらないと評価される。
事件番号: 昭和55(し)39 / 裁判年月日: 昭和55年4月28日 / 結論: 棄却
同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法三九条三項の接見等の指定権を行使することができる。
結論
本件各抗告は、勾留等の措置と自白強要を峻別しない不当な主張であり、刑訴法433条の抗告理由にあたらないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
接見禁止等の措置が黙秘権の侵害や自白の任意性に及ぼす影響を論じる際、本判例を根拠に「措置そのものの適法性」と「取調べの態様の適法性」を峻別して論じる必要がある。勾留等の要件充足性を争うべき場面で、直ちに憲法違反を主張する論理は排斥されることを示唆している。
事件番号: 昭和53(し)1 / 裁判年月日: 昭和53年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が黙秘ないし否認していること自体を不利益に扱うことは許されないが、被告人の供述態度を罪証隠滅のおそれの有無を判断するための一資料として斟酌することは、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が勾留決定等に対し、自己の黙秘または否認を理由に不利益な判断をされたことが憲法38条1項…
事件番号: 昭和33(し)33 / 裁判年月日: 昭和33年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の事実認定を非難するものは、適法な特別抗告理由とはならない。勾留の事由の判断は、個別の事案に応じた裁判所の事実認定に委ねられる事項である。 第1 事案の概要:被疑者または被告人に対し、刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由が認められないとした原審…
事件番号: 昭和33(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の認定を不服とする主張は、適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対する勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留の取消しまたは執行停止等に関する判断と推測されるが、詳細は判決文からは不明)に対し、検察側あるい…
事件番号: 昭和55(し)34 / 裁判年月日: 昭和55年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による接見拒否処分の効力を争う準抗告等の申立てにおいて、その後に被告人が起訴され、刑事訴訟法39条3項に基づく接見指定の余地がなくなった場合には、当該申立ては法律上の利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:弁護人である申立人が、検察官による被告人との接見拒否処分の取消しを求めて特別抗告を…