判旨
刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の事実認定を非難するものは、適法な特別抗告理由とはならない。勾留の事由の判断は、個別の事案に応じた裁判所の事実認定に委ねられる事項である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の存否に関する原審の事実認定の不服を、特別抗告の理由とすることができるか。
規範
特別抗告においては、最高裁判所は原決定における事実認定の当否を直接の審理対象とするものではない。刑事訴訟法60条1項各号に掲げる「勾留の事由」の有無は、被疑者・被告人に関する個別具体的な諸事情を総合して判断されるべき事実認定の問題である。
重要事実
被疑者または被告人に対し、刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留請求却下または勾留取消し等の決定と推察される)に対し、検察官等から、勾留の事由は認められるべきであるとして特別抗告が申し立てられた事案である。申立人は、過去の高等裁判所の判例等を引用して原判断の不当性を主張した。
あてはめ
申立人は勾留の事由が認められないとした原審の認定を非難するが、引用された高等裁判所の判例はいずれも本件とは事案を異にするものである。結局のところ、申立人の主張は原審が行った具体的な事実認定そのものを争うものであり、刑事訴訟法が定める憲法違反や判例相反といった限定的な特別抗告理由には該当しない。したがって、原審の認定を覆すべき適法な理由があるとはいえない。
結論
勾留の事由が認められないとした原審の認定に不服があるとの主張は、適法な特別抗告理由とはならないため、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の認定を不服とする主張は、適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対する勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留の取消しまたは執行停止等に関する判断と推測されるが、詳細は判決文からは不明)に対し、検察側あるい…
勾留の要件(罪を犯したと疑うに足りる相当な理由、および60条1項各号の事由)が事実認定の問題であることを示す。答案上、勾留の是非を論ずる際には、判例が個別の事案ごとに事由を判断していることを前提に、具体的事実から「罪証隠滅」や「逃亡」の現実的可能性を緻密にあてはめるべき根拠となる。
事件番号: 昭和33(し)79 / 裁判年月日: 昭和33年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の事由の有無に関する原審の事実認定を争うことは、適法な特別抗告理由とならない。 第1 事案の概要:刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由が認められないとした原審の決定に対し、特別抗告人が各高等裁判所の判例を引用して不服を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):勾留の事由(刑訴法60条1…
事件番号: 昭和36(し)54 / 裁判年月日: 昭和37年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項2号の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」とは、単にそのおそれがないとはいえない状態を指すのではなく、諸般の事情に照らして罪証を隠滅する事態を生ずる蓋然性があると予測される場合をいう。 第1 事案の概要:被疑者ら9名は地方公務員法違反の容疑をかけられ、岩手県教員…
事件番号: 昭和53(し)54 / 裁判年月日: 昭和53年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留及び接見等禁止の措置を講じることと、勾留中に自白を強要することとは別個の問題である。したがって、勾留等の措置自体が直ちに憲法38条1項の自己負罪拒否特権に抵触するものではない。 第1 事案の概要:被告人(抗告人)に対し、勾留及び接見等禁止の措置がとられた。これに対し抗告人は、当該措置がなされる…