刑訴法39条1項の「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者」についての疎明が不十分であるとした原判断を相当とした事例
刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
判旨
刑事訴訟法39条1項の接見交通権が認められる「弁護人となろうとする者」に該当するか否かは、客観的な選任の蓋然性により判断されるべきであり、多数回の接見にもかかわらず選任の形跡がない等の事情がある場合には、その疎明が不十分として同権利を否定し得る。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法39条1項にいう「弁護人となろうとする者」の該当性判断において、過去の接見実績や選任の状況がどのように考慮されるべきか。また、憲法34条が保障する弁護人依頼権との関係で、接見の疎明が不十分とされる限界が問われた。
規範
「弁護人となろうとする者」として接見交通権(刑訴法39条1項)を享受するためには、弁護人を選任することができる者の依頼に基づき、現に弁護人になろうとしている実体的な関係が必要であり、客観的・客観的な事実関係に照らしてその疎明が十分になされなければならない。
重要事実
申立人は、別件の被疑者と弁護人となろうとする者として多数回にわたる接見を行っていた。しかし、これらの接見が行われてきたにもかかわらず、申立人が一度も正式に弁護人に選任された形跡が認められないという事実関係が存在した。このため、申立人が実質的に「弁護人となろうとする者」に該当するのか、その疎明の程度が問題となった。
あてはめ
申立人は「弁護人となろうとする者」を自称して接見を繰り返していたが、過去の多数回に及ぶ接見実績があるにもかかわらず、一度も選任に至っていない事実は、選任に向けた具体的な進展がないことを強く推認させる。このような状況下では、単に接見の申し出があるだけでは足りず、真に選任される意思と蓋然性があることの疎明が十分とはいえない。したがって、特段の事情がない限り、刑訴法上の接見交通権を基礎付ける主体とは認められない。
事件番号: 昭和33(し)6 / 裁判年月日: 昭和33年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】接見指定に関する準抗告棄却決定に対する特別抗告において、既に弁護人が接見を終えている場合や、公訴提起または釈放により接見指定の規定が適用される余地がなくなった場合には、原決定を取り消す実益がなく、抗告は理由がない。 第1 事案の概要:弁護人が、検察官による接見指定に対して不服を申し立てた事案。しか…
結論
申立人が「弁護人となろうとする者」に当たるとの疎明が十分とは認められないとした原判断は相当であり、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
接見交通権の濫用防止の観点から、形式的な自称だけでなく、客観的な疎明を求める実務上の基準を示した。答案作成上は、接見交通権の主体性を論じる際に、接見の回数や選任の遅滞といった具体的な事実関係から「弁護人となろうとする実体」を否定するあてはめの指標として活用できる。
事件番号: 昭和50(し)48 / 裁判年月日: 昭和50年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】接見指定処分により指定された日時が経過した後に申し立てられた不服申立ては、もはや処分の取り消し等によって回復すべき法律上の利益を欠き、不適法である。 第1 事案の概要:検察官は昭和50年6月12日、弁護人に対し、同年6月16日までは被告人と接見させない旨の接見指定処分を行った。弁護人はこの処分を不…
事件番号: 平成13(し)48 / 裁判年月日: 平成13年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告事件の勾留と余罪である被疑事件の勾留が競合する場合、検察官は被告事件の防御権を不当に制限しない限り、被告事件のみの弁護人に対しても接見等指定権を行使できる。 第1 事案の概要:被告人は、既に起訴された被告事件によって勾留されていたが、同時に別件である被疑事件(余罪)についても勾留がなされ、両者…
事件番号: 昭和55(し)39 / 裁判年月日: 昭和55年4月28日 / 結論: 棄却
同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法三九条三項の接見等の指定権を行使することができる。
事件番号: 令和7(し)672 / 裁判年月日: 令和7年8月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】勾留中の接見等禁止の裁判を是認するには、被疑者が実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあることを基礎付ける具体的事情が必要であり、それを指摘せずに接見禁止を認めた決定は違法である。 第1 事案の概要:被疑者はアパート浴室に携帯電話を差し入れ性的部位を撮影しようとしたが未遂に終わったという住居侵入・…