判旨
接見指定に関する準抗告棄却決定に対する特別抗告において、既に弁護人が接見を終えている場合や、公訴提起または釈放により接見指定の規定が適用される余地がなくなった場合には、原決定を取り消す実益がなく、抗告は理由がない。
問題の所在(論点)
接見指定の当否を争う手続において、既に接見が実施された場合や、勾留期間が経過して身柄拘束の状況が変化した後に、なお原決定を取り消す実益(裁判上の利益)が認められるか。
規範
裁判所が原決定を取り消す実益(訴えの利益・不服申立ての利益)が存するためには、当該決定を覆すことによって申立人が現実に法的利益を回復できる状況にあることを要する。捜査段階の接見指定の当否を争う手続において、既に指定に基づく接見が完了している場合や、勾留期間の経過により当該被疑事実に基づく拘束自体が終了している場合には、もはや指定の効力を争う実益を欠くものと解すべきである。
重要事実
弁護人が、検察官による接見指定に対して不服を申し立てた事案。しかし、特別抗告の審理時点において、以下の事実が判明した。(1)弁護人は既に検察官の指定に基づき、被疑者らと接見を済ませている。(2)勾留状請求の日から起算して、刑事訴訟法208条所定の10日または20日の勾留期間が既に経過している。
あてはめ
本件では、第一に、申立人である弁護人は既に指定に基づき被疑者らと接見を終えている。この時点で、接見の機会の確保という目的は事実上達せられている。第二に、勾留期間が経過している以上、既に公訴が提起されていれば刑訴法39条3項(捜査段階の接見指定)の適用余地はなく、公訴が提起されていなければ身柄は釈放されているはずである。いずれの事情に照らしても、現時点で接見指定の効力を争うことは、過去の状態に対する評価を求めるに過ぎず、原決定を取り消す実益がないといえる。
結論
本件特別抗告は理由がないため、棄却されるべきである。
事件番号: 昭和49(し)45 / 裁判年月日: 昭和49年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留処分に対する不服申立てにおいて、当該勾留の期間が既に経過している場合には、処分の効力を争う利益が失われるため、申立ては不適法(理由がない)となる。 第1 事案の概要:検察官による勾留処分がなされたが、特別抗告の審理時点において、当該勾留処分の対象となっていた期間(昭和49年4月24日まで)は既…
実務上の射程
接見指定に関する不服申立てにおいて「裁判の実益(訴えの利益)」が失われる典型的な事由を明示したものである。実務上、勾留延長の当否や接見禁止解除の申立て等、身体拘束期間中に結論を出す必要がある手続において、時間経過が申立てを不適法化させる点に注意が必要である。答案上は、接見交通権侵害の救済手続において、現状の利益の有無を検討する際に引用される。
事件番号: 昭和44(し)21 / 裁判年月日: 昭和44年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】接見指定の取消又は変更を求める権利は、身体拘束中の被告人・被疑者に認められるものであるから、釈放後は申立ての利益を欠き、原決定を取り消す実益がない。 第1 事案の概要:申立人は、裁判官の発した勾留状により勾留されていた被疑者であった。申立人は検察官が行った接見指定に対して不服を申し立てていたが、最…
事件番号: 昭和50(し)49 / 裁判年月日: 昭和50年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による接見禁止処分の解除期限が経過した後に提起された不服申立ては、もはや処分の効力が消滅しており、取り消す実益がないため、法律上の利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:東京地方検察庁の検察官は、昭和50年6月12日、抗告人と被告人Aとの接見について「同年6月16日ころまで認めない」旨の…
事件番号: 昭和55(し)34 / 裁判年月日: 昭和55年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による接見拒否処分の効力を争う準抗告等の申立てにおいて、その後に被告人が起訴され、刑事訴訟法39条3項に基づく接見指定の余地がなくなった場合には、当該申立ては法律上の利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:弁護人である申立人が、検察官による被告人との接見拒否処分の取消しを求めて特別抗告を…
事件番号: 昭和54(し)54 / 裁判年月日: 昭和54年5月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留中になされた接見交通指定処分について、被疑者が釈放された場合には、当該処分の取消しを求める訴えの利益(不服申立ての実益)は消滅する。 第1 事案の概要:本件申立人は、起訴前の勾留中に検察官から弁護人との接見交通の指定処分を受けた。申立人はこの処分の当否を争い抗告を申し立てていたが、最高…