判旨
接見指定の取消又は変更を求める権利は、身体拘束中の被告人・被疑者に認められるものであるから、釈放後は申立ての利益を欠き、原決定を取り消す実益がない。
問題の所在(論点)
勾留中の被疑者が検察官による接見指定の取消・変更を求めている間に釈放された場合、当該申立てに対する裁判上の実益(抗告の利益)が認められるか。
規範
検察官による接見指定に対する取消・変更を請求する権利は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者に対して認められるものである。したがって、対象となる者が釈放された場合には、当該不服申立ての前提を欠くに至り、裁判上の救済を求める利益(訴えの利益)は失われる。
重要事実
申立人は、裁判官の発した勾留状により勾留されていた被疑者であった。申立人は検察官が行った接見指定に対して不服を申し立てていたが、最高裁判所による判断がなされる前の昭和44年2月15日に釈放された。
あてはめ
申立人は昭和44年1月27日から勾留されていたが、同年2月15日に釈放されている。接見指定の取消等を求める権利は身体拘束を前提とするものであるところ、釈放によってその前提となる身体拘束状態が解消された以上、もはや接見指定の是非を争う必要性は失われている。したがって、原決定を取り消して接見指定の適否を判断すべき実益はないと解される。
結論
本件抗告は申立ての前提を欠くため、棄却される。
実務上の射程
接見指定(刑訴法39条3項)に関する準抗告や特別抗告において、身体拘束の解除が訴えの利益に及ぼす影響を端的に示した判例である。答案上は、接見交通権の侵害を争う場面で、釈放後の事案であれば本判例を引用して訴えの利益を否定する論法として活用できる。ただし、国家賠償請求等において違法性を争う実益がある場合とは峻別する必要がある。
事件番号: 昭和54(し)54 / 裁判年月日: 昭和54年5月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留中になされた接見交通指定処分について、被疑者が釈放された場合には、当該処分の取消しを求める訴えの利益(不服申立ての実益)は消滅する。 第1 事案の概要:本件申立人は、起訴前の勾留中に検察官から弁護人との接見交通の指定処分を受けた。申立人はこの処分の当否を争い抗告を申し立てていたが、最高…
事件番号: 昭和44(し)20 / 裁判年月日: 昭和44年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放された場合には、勾留の取消し等を求める不服申立ての利益が消滅するため、裁判所は原決定を取り消す実益がないものとして抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:申立人は、昭和44年1月27日に簡易裁判所の裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、その後…
事件番号: 昭和33(し)6 / 裁判年月日: 昭和33年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】接見指定に関する準抗告棄却決定に対する特別抗告において、既に弁護人が接見を終えている場合や、公訴提起または釈放により接見指定の規定が適用される余地がなくなった場合には、原決定を取り消す実益がなく、抗告は理由がない。 第1 事案の概要:弁護人が、検察官による接見指定に対して不服を申し立てた事案。しか…
事件番号: 昭和55(し)34 / 裁判年月日: 昭和55年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による接見拒否処分の効力を争う準抗告等の申立てにおいて、その後に被告人が起訴され、刑事訴訟法39条3項に基づく接見指定の余地がなくなった場合には、当該申立ては法律上の利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:弁護人である申立人が、検察官による被告人との接見拒否処分の取消しを求めて特別抗告を…
事件番号: 昭和49(し)45 / 裁判年月日: 昭和49年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留処分に対する不服申立てにおいて、当該勾留の期間が既に経過している場合には、処分の効力を争う利益が失われるため、申立ては不適法(理由がない)となる。 第1 事案の概要:検察官による勾留処分がなされたが、特別抗告の審理時点において、当該勾留処分の対象となっていた期間(昭和49年4月24日まで)は既…