債権の仮差押命令の申立てが債務者に対する不法行為となる場合において,上記仮差押命令の申立ての後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,上記不法行為と債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係があるということはできない。 (1) 債務者は,1年4箇月間に7回にわたり第三債務者との間で商品の売買取引を行ったが,両者の間で商品の売買取引を継続的に行う旨の合意があったことはうかがわれず,債務者において両者間の商品の売買取引が将来にわたって反復継続して行われるものと期待できるだけの事情があったとはいえない。 (2) 上記仮差押命令の執行は,上記仮差押命令が第三債務者に送達された日の5日後に取り消され,その頃,第三債務者に対してその旨の通知がされており,第三債務者が債務者に新たな商品の発注を行わない理由として上記仮差押命令の執行を特に挙げていたという事情もうかがわれない。
違法な仮差押命令の申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例
民法416条,民法709条
判旨
不当な仮差押えにより、債務者と第三債務者との間の新規取引が途絶したことによる逸失利益(不法行為損害)の相当因果関係を否定した事例。
問題の所在(論点)
不当な仮差押えによる不法行為に基づき、第三債務者との将来の新規取引が途絶したことによる逸失利益を損害として賠償請求できるか(相当因果関係の有無)。
規範
不当な仮差押えによる不法行為の成否及び損害の範囲において、将来の取引継続による逸失利益との間に相当因果関係が認められるためには、単に過去の取引実績があるだけでは足りず、将来にわたって反復継続して取引が行われることを具体的に期待できるだけの事情が必要である。また、金銭債権に対する仮差押命令及びその執行は、特段の事情がない限り、第三債務者が債務者との間で新たな取引を行うことを妨げるものではない。
事件番号: 昭和35(オ)1 / 裁判年月日: 昭和35年12月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】双務契約において一度履行の提供があったとしても、その提供が継続されていない限り、相手方は民法533条に基づく同時履行の抗弁権を失わない。 第1 事案の概要:売主(被上告人)が買主(上告人)に対し、オート三輪車の売買代金の残額を請求した事案。原審は、売主がかつて本件オート三輪車を提供して買主を受領遅…
重要事実
印刷会社である上告人が、日用品販売を行う被上告人に対し、売買代金債権を被保全債権として、被上告人の取引先(第三債務者)に対する売買代金債権を仮差押えした。しかし、被上告人は多額の資産を有しており、後に保全の必要性がないとして仮差押命令は取り消された。被上告人は、この不当な仮差押えにより、取引先との新規取引が行われなくなったとして、3年分の逸失利益との相殺を主張した。なお、被上告人と当該取引先との間には継続的取引の合意はなく、過去1年4ヶ月の間に7回の取引があったに過ぎず、数ヶ月間取引がない期間も存在した。また、仮差押執行は発令から5日後には取り消されていた。
あてはめ
まず、被上告人と第三債務者の間には継続的取引の合意がなく、過去の取引頻度も限定的であったことから、将来にわたり取引が反復継続されると期待できるだけの具体的事情はない。したがって、新規取引を行うか否かは第三債務者の自由な意思に委ねられていたといえる。次に、金銭債権の仮差押えはそれ自体で新規取引を妨げる法的効力はなく、本件では執行期間も5日間と極めて短期間であった。加えて、被上告人の資産状況や第三債務者が仮差押えを理由に取引を拒絶した事実も明確ではない。以上より、仮に信用がある程度毀損されたとしても、直ちに逸失利益の損害が生じたものと断ずることはできない。
結論
本件仮差押申立てと本件逸失利益の損害との間に相当因果関係があるということはできない。
実務上の射程
不当な保全処分に基づく損害賠償請求において、単なる事実上の取引関係の断絶による逸失利益を認めることには慎重な姿勢を示した。実務上、相当因果関係の立証には、継続的取引の法的合意や、仮差押えが直接的な原因となって取引が拒絶された客観的な証拠が厳格に求められる。
事件番号: 平成12(受)67 / 裁判年月日: 平成13年6月11日 / 結論: 破棄差戻
衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継…
事件番号: 平成12(受)375 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,売主は民法565条の類推適用を根拠として代金の増額を請求することはできない。
事件番号: 昭和42(オ)1357 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
立木の売主甲より買主乙に対する売渡代金の請求訴訟において、甲勝訴の第一審判決後の控訴審で、乙が買受の意思表示に要素の錯誤があるか、または右意思表示が詐欺によるものとして取り消された旨の主張をしたのに対し、甲が弁論期日に欠席してその認否をしなかつたとしても、甲が右訴訟を維持している等の事実があるときは、甲は乙の右主張を争…