立木の売主甲より買主乙に対する売渡代金の請求訴訟において、甲勝訴の第一審判決後の控訴審で、乙が買受の意思表示に要素の錯誤があるか、または右意思表示が詐欺によるものとして取り消された旨の主張をしたのに対し、甲が弁論期日に欠席してその認否をしなかつたとしても、甲が右訴訟を維持している等の事実があるときは、甲は乙の右主張を争つているものと認めるのが相当である。
錯誤または詐欺による取消の主張について擬制自白の成立が認められなかつた事例
民訴法140条3項
判旨
売買代金請求訴訟において、被告が主張した錯誤無効や詐欺取消の事由に対し、原告が契約の有効性を前提として訴えを維持している場合には、弁論の全趣旨に基づき当該主張を争ったものと認めて自白の成立を否定すべきである。
問題の所在(論点)
被告が主張した意思表示の瑕疵(錯誤・詐欺)に関する事実に対し、原告が特段の認否を行わなかった場合に、原告が本訴(代金請求)を提起・維持していることをもって「争ったもの」とみなすことができるか。
規範
訴訟において相手方の主張した事実につき、明示的に争う姿勢を示していない場合であっても、訴訟提起および維持の状況、その他弁論の全趣旨に徴して、その事実を争っているものと認められるときは、黙示の争いがあるものとして裁判上の自白(民事訴訟法159条1項)の成立は否定される。
重要事実
売主(被上告人)が買主(上告人)に対し、松立木の売買代金の支払いを求めて提訴した。これに対し買主は、当該売買の意思表示には要素の錯誤がある、または詐欺によるものであり取り消した旨を主張した。売主側がこれらの主張に対して個別に反論を行わなかったため、擬制自白(旧民訴法140条3項)が成立するかが争点となった。
あてはめ
売主である被上告人の本訴請求は、本件売買契約が有効に成立したことを当然の前提とするものである。これに対し、買主が主張する錯誤は権利の不発生を招くものであり、詐欺取消は権利の発生に原始的な瑕疵があるとする主張である。そうであれば、被上告人が本訴を提起し、かつ継続して維持しているという事実は、買主側の主張する「契約を無効・取消しにする事実」と真っ向から対立する。したがって、弁論の全趣旨に照らせば、被上告人は買主の主張を争っているものと認められる。
結論
被上告人が買主の主張を争っていると認めた原審の判断は相当であり、自白の成立を前提とする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
請求と論理的に両立しない相手方の主張については、明示的な認否がなくても弁論の全趣旨によって争ったものと認定できる(「沈黙」が直ちに自白にならない)ことを示す。実務上は、主要事実に対する認否漏れを救済する法理として機能するが、答案上は安易に擬制自白を認めず、当事者の合理的な意思を合理的に解釈する際の根拠として用いる。
事件番号: 平成12(受)67 / 裁判年月日: 平成13年6月11日 / 結論: 破棄差戻
衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継…
事件番号: 昭和48(オ)558 / 裁判年月日: 昭和50年2月25日 / 結論: 破棄差戻
単価を六五円とする穀用かますの売買契約において引き渡された一二万八一〇〇枚につき、買主が売主にあてて、右かますに欠陥があることを具体的に指摘したうえ、穀用かますとしての商品価値が認められず、一枚当り二〇円、数量一二万八一〇〇枚、この代金二五六万二〇〇〇円としての減価採用で精算させていただく等判示のような記載のある書面を…