民訴法第三八四条ノ二による濫上告に対する制裁が課せられた事例。
判旨
当事者が原審において請求原因事実をすべて認め、他に主張立証がない旨を陳述して弁論が終結した後に、これと矛盾する事実を前提として原判決の違法を主張する上告は認められない。また、訴訟の完結を遅延させる目的のみでなされた上告に対しては、民事訴訟法上の制裁(過料に相当する国庫納付)を命じることができる。
問題の所在(論点)
1. 原審で請求原因事実を認めた当事者が、上告審においてそれと矛盾する事実を主張して原判決の違法を争うことができるか。2. 訴訟遅延のみを目的とする上告に対し、裁判所はいかなる措置を講じることができるか。
規範
1. 上告理由は、原審の口頭弁論において当事者が行った有効な陳述および確定した事実関係と矛盾してはならない。2. 上告が専ら訴訟の完結を遅延させる目的でなされたと認められる場合には、裁判所は上告人に対し、印紙額の10倍以内の金額を国庫に納付するよう命ずることができる(旧民訴法384条の2、現行民訴法190条・310条参照)。
重要事実
被上告人(原告)の請求に対し、第一審では上告人(被告)が欠席したため擬制自白により請求認容判決がなされた。控訴審において上告人は「請求原因事実をすべて認める。他に主張立証がない」と陳述し弁論が終結した。その後、判決言渡期日が和解交渉等を理由に二度延期された末に控訴棄却判決が出された。これに対し上告人は、原審で異議を述べ和解を申し立てたなど、実際の陳述と異なる事実を前提として上告を提起した。
あてはめ
上告人は、控訴審の口頭弁論において自ら請求原因事実を全面的に認め、他の方策がないことを明言している。それにもかかわらず、上告理由において「異議を述べた」とするのは、記録上明白な事実(口頭弁論調書)に反する。また、度重なる言渡期日の延期申請や、原審での陳述と明白に矛盾する主張に基づく上告の態様に照らせば、本件上告は専ら訴訟を遅延させる目的でなされたものと評価せざるを得ない。
結論
上告は不適法であり棄却される。また、訴訟完結を遅延させる目的が認められるため、上告人に対し金1万円を国庫に納付することを命ずる。
実務上の射程
訴訟上の信義則や自白の拘束力が上告審の主張立憲にも及ぶことを示唆する。特に、明白な遅延目的の上告に対する裁判所の制裁権限行使(民訴法190条等)の実例として、濫用的訴訟行為の抑制という文脈で活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)647 / 裁判年月日: 昭和32年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が書証の作成経緯を説示し、これを判断資料として肯認できる理由を示している場合、当該証拠に基づき事実認定を行うことは適法である。また、上告審において原審で主張していない新たな事実を前提とする主張を行うことは許されない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が甲第1号証(書証)の作成経緯等に関する…