上告権の濫用と認められ制裁を課せられた事例。
判旨
訴訟の経過および上告理由の内容に照らし、上告が訴訟の完結を遅延させる目的のみで提起されたと認められる場合には、民事訴訟法384条の2(現行190条・313条準用)等に基づき、上告棄却とともに過料の納付を命ずることができる。
問題の所在(論点)
上告の提起が「訴訟の完結を遅延せしむる目的のみを以て」なされたといえるか、およびその際の裁判所の措置が問題となる。
規範
上告の提起が、その理由の実質的内容を欠き、単に訴訟の完結を遅延させる目的のみで行われたと認められる場合には、裁判所は上告を棄却した上で、上告人に対し、上告状に貼用すべき印紙額の10倍以内の金額を国庫に納付するよう命ずることができる(民事訴訟法384条の2、396条参照)。
重要事実
第一審において、上告人(被告)は被上告人の請求原因を争ったものの、証拠(甲第1号証等)の成立を認め、特段の証拠調べもないまま弁論が終結し、請求認容判決が下された。控訴審でも、上告人は新たな主張立証を行わず、第2回口頭弁論期日で結了し控訴棄却となった。上告人は上告理由において、証拠の作成経過に関する事実誤認等を主張したが、それは原審の専権に属する証拠取捨を非難するものにすぎなかった。
あてはめ
本件では、第一審および控訴審を通じて上告人が実効性のある反論や立証を特に行わず、事実認定を争うのみであったという訴訟の経過が認められる。また、上告理由の内容自体も、原審の専権事項である証拠の取捨選択を理由なく非難するにすぎない。これらの事情を総合すると、本件上告は権利の行使を装った遅延目的のみによるものと評価される。
結論
本件上告を棄却し、上告人に対し金1万円(印紙額の10倍以内)を国庫に納付すべきことを命ずる。
実務上の射程
民事訴訟法における「上告権の濫用」に対する制裁措置(現行法190条、313条等の準用)の具体的な適用例として機能する。答案上は、不当な上告や訴訟遅延が問題となる場面で、訴訟経済の観点から裁判所が採りうる手段を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)413 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文の記載が極めて簡略であり、具体的な判旨の要点を抽出することは困難であるが、原審の事実認定および証拠の取捨選択に違法はないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:判決文からは具体的な事案の詳細は一切不明である。上告人が原審の判示内容や証拠の取捨、事実認定を不服として上告した事案であ…