第一、二審ともに欠席し、答弁書その他の準備書面の提出もなく、敗訴した当事者の上告理由書の論旨が判示のごとく理由のない事案について、上告濫用に対する制裁金一万円が科せられた。
上告濫用に対する制裁金納付を命じた事例。
民訴法396条,民訴法384条ノ2
判旨
訴訟を遅延させる目的のみで提起された不適法な上告に対し、裁判所は上告を棄却した上で、民事訴訟法に基づき国庫への制裁金の納付を命じることができる。
問題の所在(論点)
上告人が第一審および原審において何ら防御活動を行わず、上告審において不適法な理由を主張して争う行為が、「専ら訴訟の完結を遅延せしむる目的」によるものと認められ、制裁金の対象となるか。
規範
上告が専ら訴訟の完結を遅延させる目的で提起されたと認められる場合には、裁判所は上告の棄却に加え、申立てにかかる手数料(印紙代)の最大10倍の範囲内で、国庫への金員の納付を命ずる制裁を科すことができる(旧民事訴訟法384条の2、現行法189条・313条参照)。
重要事実
上告人は、第一審において適式な呼出しを受けながら、期日に出頭せず答弁書等の準備書面も提出しなかったため、請求原因事実を自白したものとみなされ敗訴した。原審(控訴審)の期日においても同様に不出頭により敗訴判決を受けた。その後、上告人は「示談が成立し相手方が訴えを取り下げる確約があった」「病気で出廷できなかった」等の理由を主張して上告を提起した。
あてはめ
上告人は第一審・原審ともに適法な呼出しを受けながら、一度も出頭せず書面も提出していない。上告理由として主張する示談の成否や病気等の事情は、適法な上告理由に当たらない不適法なものである。これらの経緯を記録に照らして総合的に考慮すれば、本件上告は権利の行使を仮装して訴訟の完結を不当に遅延させる目的のみで提起されたものと認めるに十分である。
結論
本件上告を棄却し、上告人に対し金1万円を国庫に納付するよう命ずる。
実務上の射程
訴訟上の信義則に反する濫用的な上告に対する制裁(民事訴訟法189条等)の適用例である。司法試験においては、不当な上告や上告受理申立てがなされた際の裁判所の対応、あるいは訴訟上の信義則違反を議論する際の傍証として、制裁金の規定と共に言及することが想定される。
事件番号: 昭和37(オ)1336 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟の経過および上告理由の内容に照らし、上告が訴訟の完結を遅延させる目的のみで提起されたと認められる場合には、民事訴訟法384条の2(現行190条・313条準用)等に基づき、上告棄却とともに過料の納付を命ずることができる。 第1 事案の概要:第一審において、上告人(被告)は被上告人の請求原因を争っ…