いわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,売主は民法565条の類推適用を根拠として代金の増額を請求することはできない。
いわゆる数量指示売買において数量が超過する場合に民法565条を類推適用して売主が代金の増額を請求することの可否
民法565条
判旨
数量指示売買において数量が超過する場合、民法565条を類推適用して売主が代金の増額を請求することはできないが、超過分の代金を支払う旨の合意があれば請求可能である。また、売主が買主に対し代金請求権を有する場合、買主が無資力等の特段の事情がない限り売主に損害は発生せず、損害賠償者の代位は生じない。
問題の所在(論点)
1. 数量指示売買で数量が超過した場合、民法565条を類推適用して売主の代金増額請求を認めることができるか。 2. 売主が買主に対し代金請求権を有している場合、測量ミスをした業者が売主に賠償金を支払うことで、民法422条により当該代金請求権を代位取得できるか。
規範
1. 数量指示売買において数量が超過する場合、民法565条の類推適用による代金増額請求は認められない。売主が追加代金を請求し得るには、買主において超過部分の代金を追加して支払う趣旨の合意が認められる必要がある。 2. 民法422条(損害賠償者の代位)が成立するためには、債権者に現に損害が発生している必要がある。売主が買主に対して代金請求権を有する場合、買主が無資力である等の特段の事情がない限り、売主には損害が発生したとはいえず、賠償者が売主の代金請求権を代位取得することはない。
重要事実
売主Dは、建物所有目的で土地を賃借していた上告人らに対し、実測面積に基づき代金を算定する合意の下、本件土地を売却した。測量業者Hのミスにより、実際の面積(399.67平米)より過小な面積(339.81平米)が売買契約書に記載され、代金もそれに基づき支払われた。後に面積不足を知ったDはHらに対し損害賠償を求め、Hの保険者である被上告人が賠償金の一部を支払った。被上告人は、民法565条類推適用等に基づきDが取得した超過代金請求権を、損害賠償者の代位等により順次取得したと主張して、上告人に支払を求めた。
あてはめ
1. 民法565条は、数量不足等における売主の担保責任を規定したものであり、数量超過の場合に売主の権利を基礎付ける条文ではない。したがって、合意がない限り同条類推適用による増額請求は否定される。 2. Dが上告人らに対し超過分の代金請求権を有しているならば、上告人らが無資力であるといった事情がない限り、Dの資産構成が変わるだけであり、Dに損害が発生したとは評価できない。損害が発生していない以上、賠償を行ったHや被上告人がDの権利を代位取得する余地はない。
結論
民法565条の類推適用による代金増額請求は認められない。また、買主の無資力等の特段の事情がない限り、損害賠償者の代位による代金請求権の取得も認められない。
実務上の射程
数量超過の場合、担保責任(565条)の枠組みは使えず、契約解釈による「追加代金支払の合意」の有無が主戦場となる。また、代位の要件として「損害の発生」を厳格に捉えており、他者に請求権がある状態では損害が否定されやすいことを示す。実務上は、代金請求権の譲渡合意の有無を予備的に主張すべきである。
事件番号: 平成3(オ)825 / 裁判年月日: 平成6年10月11日 / 結論: 破棄差戻
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