建物の賃借人の失火により右建物が全焼してその敷地の使用借権を喪失した賃貸人は、賃借人に対し、右建物の焼失による損害として、焼失時の建物の本体の価格と土地使用に係る経済的利益に相当する額とを請求することができる。
建物の賃借人の失火により右建物が全焼してその敷地の使用借権を喪失した賃貸人が賃借人に請求することのできる損害
民法416条,民法593条
判旨
建物の朽廃・滅失までを目的とする土地の使用貸借において、建物の焼失により土地が使用不能となった場合、特段の事情がない限り、建物の本体価格とは別に土地使用に係る経済的利益の喪失による損害が発生する。
問題の所在(論点)
建物所有目的の土地使用貸借において、建物が焼失し土地の使用ができなくなった場合、建物本体の価格とは別に「土地使用に係る経済的利益」を損害として計上できるか。民法415条または709条に基づく損害賠償の範囲が問題となる。
規範
地上の建物が朽廃、滅失するまでこれを所有するという目的でされた土地の使用貸借の借主が、契約の途中で土地を使用することができなくなった場合には、特段の事情のない限り、土地使用に係る経済的利益の喪失による損害が発生する。この経済的利益は、通常は建物の本体価格(再構築価格から経年減価を控除した額)に含まれるとはいえない。
重要事実
土地所有者Dは、子である上告人に対し、節税目的等で建物(本件建物)を贈与し、建物が朽廃・滅失するまで所有する目的で本件土地を無償で貸し付けた(使用貸借)。上告人は本件建物を被上告人に賃貸していたが、被上告人の二女の失火により建物が全焼し、上告人は土地の使用借権を喪失した。上告人は火災保険金1350万円を受領しており、建物本体価格相当の損害は補填されていたが、別途、土地の使用借権喪失による損害賠償を請求した。
事件番号: 平成3(オ)1495 / 裁判年月日: 平成5年11月25日 / 結論: 破棄差戻
いわゆるファイナンス・リース契約において、利用者がリース物件の引渡しを受けていないのにリース業者にこれを受領した旨の受領書を交付し、その後リース業者が販売店からその経営不振を理由にリース物件を引き揚げたなど判示の事実関係の下においては、利用者は、リース物件を使用することができなかったからといって、リース料の支払義務を免…
あてはめ
本件では、建物が朽廃・滅失するまでという長期の土地使用が予定されていた。このような場合、土地を無償で利用できること自体に独自の経済的価値が認められる。本件建物は老朽化していたが火災後も10年程度は存続可能であり、その期間の土地利用から得られる利益は、再構築価格から算出される建物本体の価値とは別個に評価されるべきものである。したがって、建物本体価格(1350万円)が保険金で填補されたからといって、直ちに損害のすべてが填補されたとはいえない。
結論
上告人は、焼失時の建物本体価格と、土地使用に係る経済的利益に相当する額との合計額を損害として請求できる。このため、土地使用に係る経済的利益の有無及び額について審理を尽くさせるため、原審に差し戻す。
実務上の射程
使用貸借であっても、建物所有目的で期間が長期にわたる場合、その利用権には財産的価値(経済的利益)が認められ、損害賠償の対象となることを示した判例である。答案上は、不法行為や債務不履行に基づく損害賠償額の算定において、権利(借権)の喪失自体が建物価格とは別個の損害を構成することを論証する際に用いる。
事件番号: 平成12(受)375 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,売主は民法565条の類推適用を根拠として代金の増額を請求することはできない。
事件番号: 昭和54(オ)211 / 裁判年月日: 昭和58年11月10日 / 結論: 棄却
都市公園法附則四項及び七項に基づく損失補償は、従前の使用許可による権利の喪失と同時履行の関係に立つものではなく、右補償がされなくとも右権利喪失の効果は生じると解すべきである。
事件番号: 平成7(オ)2025 / 裁判年月日: 平成9年11月11日 / 結論: 棄却
賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては、右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債務者は、右債権の譲受人に対して右債権の発生に係る契約の公序良俗違反による無効を主張してその履行を拒むことができる。