強制疎開跡地約三二坪を普通建物所有の目的で賃借しそのうち約六坪の地上に約五坪の臨時応急的なバラツクを建設使用しているのみで、残地約二六坪を疎開時の残材を約三尺の高さに堆積せしめたまま放置しているときは、右残地については未だ罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項にいう「現に建物所有の目的で使用する」ものということはできない。
罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項にいう「現に建物所有の目的で使用する」場合にあたらない事例
罹災都市借地借家臨時処理法2条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項にいう「建物所有の目的で使用する」土地とは、必ずしも建物の建坪部分に限られないが、臨時応急的な設備が建設されたに過ぎない場合や、広大な土地の一部にのみ小規模な建物があるに過ぎない場合には、特段の事情がない限り、建物敷地外の部分についてまで「使用」しているとは認められない。
問題の所在(論点)
臨時処理法2条1項にいう、借地申出を拒絶し得る要件としての「現に建物所有の目的で使用する」土地の範囲および判断基準が問題となる。また、小規模なバラック建築や未使用部分の存在が、土地全体の「使用」に及ぼす影響が争点となった。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項の「現に建物所有の目的で使用する」土地の範囲は、現実に存在する建物の建坪部分に限定されるものではない。しかし、借地権者が一個の契約により一筆の土地を賃借した場合であっても、その一部について適法な使用を開始していない限り、当該部分については「建物所有の目的で使用する」とはいえない。具体的には、建設された建物が臨時応急的な設備に止まる場合や、建物敷地と見られる程度を超える残余の部分については、特段の事情がない限り、同項の「使用」には当たらないと解するのが相当である。
重要事実
被上告人は、強制疎開により消滅した本件土地(約32坪)の借地権回復を企画し、臨時処理法に基づき借地の申出を行った。その後、被上告人は上告人に対し、将来回復すべき借地権を譲渡する契約を締結した。しかし、本件土地上には訴外Dが既に約20年の借地権を取得しており、建坪約5坪の木造ルーフイング葺バラック(土台がなく露店小屋程度のもの)を建設し、生魚配給所として使用していた。本件土地のうち残りの約26坪は、残材や残土が累積したまま未使用の状態で放置されていた。原審は、Dが土地全部を適法に使用していたため、被上告人の借地申出による権利取得は不能であり、譲渡契約も不能な条件を付したものとして無効と判断した。
あてはめ
本件における訴外Dの建物は、わずか5坪のバラックであり、土台がなく一部が古戸で代用されているなど、居住に耐えない臨時応急的な設備に過ぎない。このような建物の建設だけでは、いまだ契約に沿う借地の使用を開始したものとはいえない疑いがある。また、仮に建物敷地部分の使用を認めるとしても、残りの約26坪は残材が累積し未使用で放置されているのであるから、特段の事情がない限り、当該余剰部分まで使用しているとは認められない。したがって、一個の借地契約であっても、適法な使用を開始していない部分については、なお臨時処理法に基づく借地申出の対象となり得る。
結論
本件土地全部が「使用」されているとして借地権譲渡契約を無効とした原判決には、臨時処理法2条1項の解釈誤りまたは審理不尽の違法がある。したがって、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
戦後の特殊な臨時処理法に関する事案であるが、借地権の「使用」の範囲が契約単位ではなく客観的な利用実態に基づき判断されるべきという視点は、借地借家法等の建物所有目的の判断等においても示唆を与える。特に、形式的な契約範囲と、実際の土地利用の態様(応急的か恒久的か、敷地外の利用状況)を峻別する実務上の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)685 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、建物設備の種類、賃貸借成立の経緯等を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃主)との間で本件土地の賃貸借契約が締結された。原審(東京高判昭33・3・25)によれば、契約…
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…
事件番号: 昭和29(オ)232 / 裁判年月日: 昭和35年6月15日 / 結論: その他
罹災都市借地借家臨時処理法第二条、第三条は憲法第二九条に違反しない。