判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。
問題の所在(論点)
罹災法2条に基づき、罹災当時の借地権者等に認められた新たな借地権(優先借地権)について、第三者に対する対抗力を認めるためには、借地法や不動産登記法に基づく登記等の対抗要件を備える必要があるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法(以下「罹災法」)2条の規定により設定された借地権は、借地法上の対抗要件(登記、または借地上の建物の登記)を具備していなくても、設定の日から10年間に限り、その土地の権利を取得した第三者に対して当然に対抗することができる。
重要事実
本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由として、土地の譲受人等の第三者に対して権利主張が可能かどうかが争われた事案である。上告人は、登記等の対抗要件を欠く借地権は第三者に対抗できない旨を主張して上告した。
あてはめ
罹災法2条は、戦災等の罹災都市における借地関係を迅速かつ簡便に処理するための特別法である。同条に基づき設定された借地権について、一律に登記等の具備を対抗要件とすると、罹災直後の混乱期における権利保護という法の趣旨を損なうこととなる。したがって、同条の規定によって設定された借地権は、その性質上、法律の規定により直接発生し、かつ一定期間(10年間)に限り、特段の公示手段を要せずとも当然に対抗力を有するものと解される。本件においても、この10年の期間内であれば、登記等の有無にかかわらず第三者に対抗可能であると解される。
結論
罹災法2条の借地権は、登記等がなくても10年間は第三者に対抗できるため、原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和28(オ)1043 / 裁判年月日: 昭和30年2月18日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は、その登記および地上建物の登記がなくても、右賃借権設定後その土地につき所有権取得の登記をした第三取得者に対抗し得る。
実務上の射程
本判決は、罹災法という特別法に基づく権利の対抗力に関する限定的な射程を有するものである。もっとも、法律の規定によって発生する権利において、公示を欠く場合でも政策的配慮から一定期間の対抗力を認める例として、特別法解釈の指針となる。現代の司法試験においては、民法177条の例外(対抗要件不要の場面)や、借地借家法による公示の補完という文脈で対照的に参照されることがある。
事件番号: 昭和35(オ)904 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく優先賃借権の対象となる「敷地」には、建物の床面積相当分のみならず周囲の空地も含まれるが、現存建物の敷地と罹災建物の敷地が物理的に別個の部分である場合には、同条の適用はない。 第1 事案の概要:1. 賃貸人Eと賃借人D(後に上告人らが承継)との間で、一時使用目的…
事件番号: 昭和28(オ)1091 / 裁判年月日: 昭和30年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法に基づく敷地優先賃借申出権の発生には、罹災建物滅失当時に当該敷地を建物所有目的で使用していたことを要しない。また、同法10条は借地権者が罹災建物を所有していた場合にのみ適用される。 第1 事案の概要:上告人Aは、本件土地が罹災建物の敷地であったとして、罹災都市借地借家臨時…
事件番号: 昭和31(オ)169 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 破棄差戻
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の借地権者(賃借人)甲から、地上に建物を建設してその土地を不法に占有する乙に対し、土地明渡請求訴訟が進行中、同条所定の五箇年が経過した後に、乙がその土地を買受けて所有権を取得した場合、甲はその賃借権につき乙に対する対抗力を失わないものと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)465 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物について登記が存在しない場合には、「建物保護ニ関スル法律」1条による対抗力は認められない。また、建物の収去を求める請求が権利の乱用とされるか否かは、事案の具体的経緯に照らして慎重に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は土地を賃借しその上に建物を所有していたが、当該建物につい…