判旨
罹災都市借地借家臨時処理法に基づく敷地優先賃借申出権の発生には、罹災建物滅失当時に当該敷地を建物所有目的で使用していたことを要しない。また、同法10条は借地権者が罹災建物を所有していた場合にのみ適用される。
問題の所在(論点)
1. 罹災都市借地借家臨時処理法32条1項、2条1項に基づく敷地優先賃借申出権の成立に、建物滅失当時の建物所有目的での使用が必要か。 2. 同法10条の適用対象となる者の範囲。
規範
1. 罹災都市借地借家臨時処理法2条1項、32条1項の敷地優先賃借申出権は、建物滅失当時にその敷地を建物所有目的で使用していたことを要件としない。 2. 同法10条の規定は、罹災建物または疎開建物を「所有」していた借地権者に限定して適用される。
重要事実
上告人Aは、本件土地が罹災建物の敷地であったとして、罹災都市借地借家臨時処理法に基づき敷地優先賃借申出権を有すると主張し、被上告人(土地所有者)に対し、本件建物の収去および土地明渡しを拒んだ。しかし、原審は被上告人と上告人の間に賃貸借の合意があった事実は認められないとし、また上告人が同法10条の適用対象であることも否定したため、上告人が不服を申し立てた。
あてはめ
1. 法32条1項、29条、戦時罹災土地物件令4条を解釈すると、優先賃借申出権の行使にあたり、建物滅失時に建物所有目的で使用していた事実は不要である。もっとも、本件では土地所有者との間に賃貸借の合意が成立した事実は認められない。 2. 法10条は、旧借家臨時処理法7条や建物保護法1条等との対比から、罹災建物を所有していた借地権者を保護する趣旨である。本件の上告人が当該要件を満たさない限り、同条の適用は受けられない。
結論
上告人による敷地優先賃借権の主張は認められず、土地所有者による建物収去土地明渡請求を認容した原審の判断は、権利の濫用にも当たらず正当である。
事件番号: 昭和28(オ)1118 / 裁判年月日: 昭和30年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づく借地権の対抗要件の成否は、通常の借地権の対抗に関する一般原則とは異なる独自の特別法上の規律による。 第1 事案の概要:上告人は所有権に基づき土地の明け渡しを請求したが、原審は罹災都市借地借家臨時処理法10条を適用し、被上告人が借地権を第三者(上告人)に対抗で…
実務上の射程
戦後処理の特別法に関する判例であり、現代の借地借家法下で直接参照される機会は少ない。しかし、特別法上の優先権の発生要件を文言および関連法規から厳格に解釈する姿勢や、権利の濫用の該否を事実関係に即して判断する実務上の基本姿勢を示すものとして位置付けられる。
事件番号: 昭和28(オ)1043 / 裁判年月日: 昭和30年2月18日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は、その登記および地上建物の登記がなくても、右賃借権設定後その土地につき所有権取得の登記をした第三取得者に対抗し得る。
事件番号: 昭和35(オ)904 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく優先賃借権の対象となる「敷地」には、建物の床面積相当分のみならず周囲の空地も含まれるが、現存建物の敷地と罹災建物の敷地が物理的に別個の部分である場合には、同条の適用はない。 第1 事案の概要:1. 賃貸人Eと賃借人D(後に上告人らが承継)との間で、一時使用目的…
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…