判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく優先賃借権の対象となる「敷地」には、建物の床面積相当分のみならず周囲の空地も含まれるが、現存建物の敷地と罹災建物の敷地が物理的に別個の部分である場合には、同条の適用はない。
問題の所在(論点)
1. 賃料増額の合意がある場合に、借地法12条(賃料増額請求権)の適用があるか。2. 罹災都市借地借家臨時処理法2条にいう「敷地」の範囲と、現建物と罹災建物の敷地が異なる場合の同条の適用の有無。
規範
1. 一時使用目的の借地権(旧借地法適用除外)の成否は、契約の動機、目的、期間、賃料等の諸般の事情を総合考慮して判断される。2. 罹災都市借地借家臨時処理法2条にいう罹災建物の「敷地」とは、単に建物の床面積に相当する土地だけでなく、建物の利用上必要であった周囲の空地をも含むものと解する。しかし、現に存する建物の敷地と罹災した建物の敷地が、同一筆の土地内にあっても物理的に部分を異にする場合には、同条の適用はない。
重要事実
1. 賃貸人Eと賃借人D(後に上告人らが承継)との間で、一時使用目的の下で本件土地の賃貸借契約が締結された。2. その後、固定資産税の増額に伴い、賃貸人と賃借人との間で賃料増額の合意がなされ、増額された賃料が支払われていた。3. 上告人所有の建物が罹災し、その後新たに建物が建築されたが、現建物の敷地は、罹災した従前建物の敷地とは同一筆の土地内にあるものの、具体的な位置(部分)が異なっていた。
あてはめ
1. 賃料の変更について、貸主の求めに対し借主が同意して支払を継続している以上、当事者間の合意による賃料改定が成立しており、形成権的行使を前提とする借地法12条の適用の余地はない。2. 罹災都市借地借家臨時処理法2条の優先賃借権は、建物の利用に不可欠な空地まで及ぶが、本件では原審の認定によれば現建物の敷地と罹災建物の敷地は部分を異にしている。したがって、罹災建物の利用と関連しない土地部分についてまで優先賃借権を認めることはできない。
結論
本件賃貸借は一時使用目的であり、かつ、現建物の敷地が罹災建物の敷地と異なる以上、罹災都市借地借家臨時処理法2条の適用による優先賃借権は認められない。
事件番号: 昭和32(オ)270 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法に基づき賃貸借の成立を主張するには、対象土地が法的に保護されるべき建物の敷地と同一性を有する必要があり、僅少な部分が重複するにすぎない場合は同法による優先賃借権等の適用は受けられない。 第1 事案の概要:上告人は、夫が賃借していた疎開建物の敷地の一部が本件土地に含まれてい…
実務上の射程
借地借家法における「一時使用目的」の認定手法(総合考慮)や、罹災法における「敷地」の概念を画定する際の重要判例である。特に、敷地が物理的にズレている場合には優先賃借権の射程外となることを明確にしており、罹災時の紛争における土地の特定性の重要度を示している。
事件番号: 昭和28(オ)1091 / 裁判年月日: 昭和30年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法に基づく敷地優先賃借申出権の発生には、罹災建物滅失当時に当該敷地を建物所有目的で使用していたことを要しない。また、同法10条は借地権者が罹災建物を所有していた場合にのみ適用される。 第1 事案の概要:上告人Aは、本件土地が罹災建物の敷地であったとして、罹災都市借地借家臨時…
事件番号: 昭和44(オ)800 / 裁判年月日: 昭和45年3月12日 / 結論: その他
戦災による地上建物の焼失後にその居住者を含む多数の者が権原なく土地を占有し、土地所有者は、その罹災者たる立場に同情したが、従来右士地の使用に関し多年紛争を繰り返して、右罹災当時も裁判上の和解により建物居住者に対する明渡を猶予中であつたという事情に鑑み、暫定的にのみ右占有者らの土地使用を許諾することとし、占有者らもその趣…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…