判旨
罹災都市借地借家臨時処理法に基づき賃貸借の成立を主張するには、対象土地が法的に保護されるべき建物の敷地と同一性を有する必要があり、僅少な部分が重複するにすぎない場合は同法による優先賃借権等の適用は受けられない。
問題の所在(論点)
罹災都市借地借家臨時処理法2条および9条に規定される「敷地」の意義と、賃借していた建物の敷地と僅少な重複があるにすぎない土地について、同法に基づく優先賃借権等の効力を主張できるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条、9条の適用を受けるためには、対象となる土地が「疎開建物の敷地」であると認められなければならない。土地の一部が物理的に重複していても、その重複が僅少である場合には、特段の事情がない限り、法的な同一性を欠き、同法に基づく賃貸借の成立や優先賃借権を認めることはできない。
重要事実
上告人は、夫が賃借していた疎開建物の敷地の一部が本件土地に含まれていると主張し、罹災都市借地借家臨時処理法に基づく優先賃借権ないし賃貸借の成立を主張した。しかし、事実認定によれば、本件土地は疎開建物の敷地の東側に位置する別異の土地であり、両者はごく僅かな部分で重複するにすぎない状態であった。原審は、この僅少な重複のみでは本件土地を疎開建物の敷地とみることはできないと判断し、上告人の請求を棄却した。
あてはめ
本件土地と疎開建物の敷地は、地理的に隣接しているものの、客観的な認定によれば別個の土地である。たとえ上告人が主張するように両土地に僅かな重複部分が存在したとしても、その「僅少な共通性」は、法が保護の対象とする敷地の同一性を基礎付けるには足りない。したがって、本件土地そのものを疎開建物の敷地と評価することはできず、同法9条や2条が規定する優先賃借権等の成立要件を充足しない。
結論
本件土地は疎開建物の敷地には当たらないため、罹災都市借地借家臨時処理法に基づく賃貸借の成立や対抗力を主張することはできず、上告人の請求は認められない。
事件番号: 昭和35(オ)904 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく優先賃借権の対象となる「敷地」には、建物の床面積相当分のみならず周囲の空地も含まれるが、現存建物の敷地と罹災建物の敷地が物理的に別個の部分である場合には、同条の適用はない。 第1 事案の概要:1. 賃貸人Eと賃借人D(後に上告人らが承継)との間で、一時使用目的…
実務上の射程
特別法の適用要件としての「土地の同一性」に関する判断事例である。物理的な重複があったとしても、それが極めて軽微な場合には法律上の敷地概念に包含されないという実務的な基準を示している。民法上の賃借権の範囲や建物保護法の適用範囲が争われる場面でも、土地の同一性・一体性の判断において参考となり得る。
事件番号: 昭和33(オ)664 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求において、収去すべき建物部分が上告人の所有地に跨る部分を除外して判示されているなど、執行が可能な程度に収去範囲が特定されていれば、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、不法占有を理由として建物の収去及び土地の明渡を求めた事案。第一審判決と原判決(二審)と…
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…
事件番号: 昭和32(オ)624 / 裁判年月日: 昭和34年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現・借地借家法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、期間、地上建物の種類、賃貸借成立の経緯等の諸客観的事実に基づき、総合的に判断される。 第1 事案の概要:昭和20年末頃、Dと上告人Aとの間で土地27坪2合について、土蔵の使用貸借と併せて一時使用の賃貸…