判旨
建物収去土地明渡請求において、収去すべき建物部分が上告人の所有地に跨る部分を除外して判示されているなど、執行が可能な程度に収去範囲が特定されていれば、判決に違法はない。
問題の所在(論点)
1.建物収去土地明渡請求において、収去の対象となる建物部分の特定が不十分であるとして判決が違法となるか。2.不法占有開始時期の認定の齟齬が判決の結論に影響を及ぼすか。
規範
建物収去土地明渡を命ずる判決においては、強制執行の対象を特定するため、収去すべき建物の範囲が客観的に明確に判示されていることを要する。ただし、他の所有地との境界等に鑑み、収去すべき部分を合理的に判別できる程度の明示があれば、特定の要件を満たすものと解される。
重要事実
被上告人が上告人に対し、不法占有を理由として建物の収去及び土地の明渡を求めた事案。第一審判決と原判決(二審)との間で不法占有開始時期の認定に食い違いがあったが、不法占有の事実に変わりはなかった。また、原判決は建物収去を命ずるに際し、上告人の所有地に跨る部分を除外してその範囲を判示していた。
あてはめ
1.原判決は、本件建物のうち上告人の所有地に跨る部分を明確に除外して収去を命じている。この判示の程度によれば、強制執行の対象となる収去部分は十分に明示されているといえ、特定の不備による違法はない。2.本件では不法占有に基づく損害賠償請求がなされていないため、占有開始時期に認定の差異があっても「不法占有」という結論に変わりはなく、判決の主文に影響を及ぼす法令違背とはいえない。
結論
上告棄却。建物収去の対象範囲が合理的に特定されており、かつ不法占有の事実が認められる以上、判決は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)94 / 裁判年月日: 昭和31年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約に基づき土地の占有権原を主張する場合、対象物件が契約当初の目的物件に含まれているか、あるいは建物の敷地として客観的に付随している必要がある。また、賃貸人による使用の承諾が認められない限り、不法占有としての責任を免れない。 第1 事案の概要:上告人は、係争宅地について土地賃貸借契約または家…
給付判決における「執行対象の特定」に関する実務上の判断基準を示す。境界線が複雑な事案においても、判決文全体から収去すべき範囲が客観的に判別可能であれば、特定の欠如には当たらないとする。また、付随的な事実認定の誤りが主文に影響しない場合の処理についても参考となる。
事件番号: 昭和24(オ)174 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】給付判決における目的物の表示が簡略であっても、現場に臨むことで対象範囲を判別でき、強制執行等に支障がない程度に特定されていれば、給付の範囲が確定していないとはいえない。 第1 事案の概要:土地所有者である被上告人らが、隣接する各自の所有地(イ地及びロ地)上に家屋を所有して占有する上告人らに対し、建…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。
事件番号: 昭和32(オ)270 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法に基づき賃貸借の成立を主張するには、対象土地が法的に保護されるべき建物の敷地と同一性を有する必要があり、僅少な部分が重複するにすぎない場合は同法による優先賃借権等の適用は受けられない。 第1 事案の概要:上告人は、夫が賃借していた疎開建物の敷地の一部が本件土地に含まれてい…