判旨
給付判決における目的物の表示が簡略であっても、現場に臨むことで対象範囲を判別でき、強制執行等に支障がない程度に特定されていれば、給付の範囲が確定していないとはいえない。
問題の所在(論点)
給付判決において、目的物の表示が簡略である場合に、給付の範囲が確定しているといえるか(判決の特定性の程度)。
規範
給付の訴えにおける目的物の特定は、執行の対象を個別化できる程度になされる必要がある。判決書の表示が簡略であっても、目的物の所在、隣接地の状況、紛らわしい建物の有無等の諸事情に照らし、現場において執行対象を容易に判別できるのであれば、給付の範囲は確定していると解すべきである。
重要事実
土地所有者である被上告人らが、隣接する各自の所有地(イ地及びロ地)上に家屋を所有して占有する上告人らに対し、建物収去土地明渡しを求めた事案。第一審判決では明渡し範囲の表示方法が簡略であったため、上告人側が給付の範囲が不確定であると主張して争った。なお、当該土地の境界に争いはなく、地上には対象建物以外に紛らわしい建物は存在していなかった。
あてはめ
本件では、イ地とロ地は元々一筆の土地であり境界に争いがないこと、地上には本件建物以外に紛らわしい建物が存在しないことから、現場に臨めば明渡すべき部分を判別することは不能ではない。また、上告人の一方についても退去すべき具体的箇所(玄関左側二畳)が判明しており、混乱のおそれもない。共同して勝訴した被上告人らが共同して執行にあたることが想定されることも踏まえれば、表示が簡略であっても給付範囲は確定しているといえる。
結論
本件判決における表示は、給付の範囲が確定しないといえるほど不十分ではなく、適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)664 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求において、収去すべき建物部分が上告人の所有地に跨る部分を除外して判示されているなど、執行が可能な程度に収去範囲が特定されていれば、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、不法占有を理由として建物の収去及び土地の明渡を求めた事案。第一審判決と原判決(二審)と…
訴状や判決書における目的物の特定(民訴規則2条2項、判決書記載)の程度に関する基準となる。実務上は図面等で厳密に特定すべきだが、執行の現場で客観的に判別可能であれば、表示の簡略さのみをもって直ちに不適法とはならないことを示唆している。
事件番号: 昭和34(オ)1174 / 裁判年月日: 昭和37年10月2日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡・転貸につき、単に建物に会社名の看板を掲げ、賃料を会社振出の小切手で支払ったという事実のみでは、特段の事情がない限り、地主が当該譲渡等を黙認・承諾したとは認められない。 第1 事案の概要:賃貸人(上告人)は、賃借人(D)との間で宅地賃貸借契約を締結していた。Dは同族会社(B5鉄工所)を…
事件番号: 昭和34(オ)474 / 裁判年月日: 昭和37年6月7日 / 結論: 棄却
主位的申立として、建物から退去してその敷地の明渡しを求め、予備的申立として、建物収去・土地明渡しを求め、その請求原因として、原告は右土地は原告の所有であるといい、前者につき、被告は右建物を無断で建てて右土地を不法占有している者から借受けて居住し右土地を不法占有していると主張し、後者につき、被告は右建物の建築者から右建物…
事件番号: 昭和32(オ)624 / 裁判年月日: 昭和34年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現・借地借家法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、期間、地上建物の種類、賃貸借成立の経緯等の諸客観的事実に基づき、総合的に判断される。 第1 事案の概要:昭和20年末頃、Dと上告人Aとの間で土地27坪2合について、土蔵の使用貸借と併せて一時使用の賃貸…
事件番号: 昭和33(オ)1114 / 裁判年月日: 昭和35年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法541条(改正前も同様)所定の催告は、債権者が履行を求める債務の内容を債務者に知らしめる程度のものであれば足り、給付の目的が金銭である場合でも、必ずしもその金額を明示することを要しない。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、地代の支払を催告するに際し、「各統制額に値上…