判旨
民法541条(改正前も同様)所定の催告は、債権者が履行を求める債務の内容を債務者に知らしめる程度のものであれば足り、給付の目的が金銭である場合でも、必ずしもその金額を明示することを要しない。
問題の所在(論点)
民法541条に基づく解除の前提となる催告において、請求する金額が具体的に表示されていない場合に、当該催告は有効といえるか。
規範
民法541条に基づく解除の要件たる催告は、債権者が履行を求める債務の内容を債務者に知らしめる程度のものであれば足りる。したがって、金銭債務の履行を求める場合であっても、催告に際して必ずしも具体的な金額を表示することを要せず、諸般の事情から債務者が履行すべき内容を了知し得るのであれば、その催告は有効である。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、地代の支払を催告するに際し、「各統制額に値上げされた地代を計算して延滞地代を支払われたい」と述べ、具体的な金額は表示しなかった。もっとも、賃貸人は告示改正のたびに統制額を明示して値上げの意思表示をしており、催告以前にも再三にわたり統制額どおりの地代を請求していた。また、賃借人の代理人である父は、自ら税務事務所等で統制地代額を調査しており、賃借人側において催告当時、統制地代額について十分な知識を有していた。
あてはめ
本件催告では金額が具体的に示されていないが、賃貸人は以前から統制額を明示した上で地代値上げの意思表示や請求を繰り返していた。加えて、賃借人の代理人自らも事前に統制地代額を調査しており、賃借人側は支払うべき金額について十分な知識を有していた。このような状況下においては、本件催告は賃貸人が支払を求める金額を賃借人に了知させるに十分なものであったといえる。したがって、金額の具体的表示を欠いていても、債務の内容を知らしめるという催告の目的は果たされている。
結論
本件催告は、賃貸借解除の前提たる催告として有効である。
事件番号: 昭和33(オ)657 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の支払催告において、催告額が正当な額を超過していても、債権者に正当額の提供では受領しない意思が明確でない限り、正当額の限度で催告は有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、約1年分の延滞賃料として2万377円の支払を3日以内に催告した。しかし、当時の賃料統制額…
実務上の射程
金銭債務の履行催告において、金額の特定が不十分であっても直ちに催告が無効になるわけではないという判断枠組みを示す際に用いる。実務上は、過大催告の有効性に関する判例(最判昭34.2.13等)と併せて、催告の同一性・特定の程度の要件を論じる際に参照すべき射程の広い判例である。
事件番号: 昭和37(オ)962 / 裁判年月日: 昭和38年11月22日 / 結論: 破棄差戻
約定賃料額ないし増減請求権行使によつて改訂された具体的賃料額を確定することなく、催告にかかる賃料額が相当賃料額に当ることをもつて、賃貸借解除の前提たる賃料支払の催告を有効とした判断には、審理不尽、理由不備の違法がある。
事件番号: 昭和38(オ)1164 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和41(オ)315 / 裁判年月日: 昭和41年9月20日 / 結論: 棄却
適正賃料額による延滞賃料の合計額が八〇九九円であるのに、催告額が八三八二円四〇銭であつた場合には、右催告は適正の賃料額の限度において有効と解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
賃貸建物の延滞賃料と共に賃貸借の存在しない建物占有による損害金とを不可分的に併せてした催告であつても、当該賃貸借契約解除の前提たる催告として有効である。