賃貸建物の延滞賃料と共に賃貸借の存在しない建物占有による損害金とを不可分的に併せてした催告であつても、当該賃貸借契約解除の前提たる催告として有効である。
他の損害金と併せてした延滞賃料の催告の効力。
民法541条
判旨
賃料の催告に際し、賃貸借の存しない建物の損害金を併せて請求した場合や、催告額が真実の債務額を超えている場合であっても、債務者が真実の額を支払えば債権者がこれを受領したと認められる特段の事情があるときは、本来的給付の限度で催告は有効である。
問題の所在(論点)
延滞賃料の催告に際して賃料以外の名目の金員を合算して請求した場合、または催告額が適正な債務額を超えていた場合に、当該催告は民法541条に基づく契約解除の前提として有効といえるか。
規範
債権者が債務額を超えて催告した場合(過大催告)であっても、催告の趣旨が本来的給付の催告にあると認められ、かつ、債務者が本来的給付をすれば債権者がこれを受領したであろうと認められる場合には、本来的給付の限度で催告の効力を認めるべきである(民法541条)。また、催告に際して賃料以外の金員(損害金等)を併せて請求したとしても、直ちに催告が無効となるものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)が、賃借人(上告人)に対し、建物の延滞賃料の支払を催告した際、併せて賃貸借の存しない建物占有部分についての損害金を含めて請求した。また、この催告額は適正な賃料額を超過する過大催告であったが、賃借人が適正な賃料の範囲内で支払ったとしても賃貸人がこれを受領拒絶したと認めるに足りる証拠は存在しなかった。賃借人は催告に対して不払いを続けたため、賃貸人は賃貸借契約を解除した。
事件番号: 昭和42(オ)1080 / 裁判年月日: 昭和42年12月26日 / 結論: 棄却
借賃支払の催告に定められた金額が、約定の借賃額の四・七倍以上に達するのみならず、その計算の基礎において理由のない主張に基づいているときは、右催告は無効と解すべきである。
あてはめ
まず、延滞賃料の催告に際して損害金を併せて請求しても、賃料支払の督促という性質は失われない。次に、催告額と適正賃料額に差(過大請求)があったとしても、本件では賃借人が適正額を支払えば賃貸人がこれを受領したと認められる状況にある。それにもかかわらず、賃借人が一切の支払をせず不払いに終始した以上、本件催告は適正額の限度で有効であり、これを理由とする解除も認められる。
結論
本件催告は適正な賃料額の限度で有効であり、賃借人が不払いを継続したことを理由とする本件賃貸借契約の解除は有効である。
実務上の射程
過大催告の有効性に関するリーディングケースである。答案では、(1)過大の程度が著しくないか、または(2)債務者が真実の額を支払えば債権者が受領したであろうといえるか(受領拒絶の意思の有無)を検討し、信義則の観点から催告の有効性を判断する際の枠組みとして用いる。
事件番号: 昭和41(オ)315 / 裁判年月日: 昭和41年9月20日 / 結論: 棄却
適正賃料額による延滞賃料の合計額が八〇九九円であるのに、催告額が八三八二円四〇銭であつた場合には、右催告は適正の賃料額の限度において有効と解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)657 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の支払催告において、催告額が正当な額を超過していても、債権者に正当額の提供では受領しない意思が明確でない限り、正当額の限度で催告は有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、約1年分の延滞賃料として2万377円の支払を3日以内に催告した。しかし、当時の賃料統制額…
事件番号: 昭和38(オ)1164 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和38(オ)265 / 裁判年月日: 昭和39年1月28日 / 結論: 棄却
催告の額が多額に失しても、債権者において客観的に正しい賃料額を受領しない意思が明瞭でない場合においては、債権者は、債務者の履行の提供がないかぎり、契約を解除することができる。