借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物買取請求権を有しない。
債務不履行による土地賃貸借契約解除と建物買取請求権の有無。
借地法4条
判旨
賃料の過大催告があっても、超過額が僅少で特段の事情がない限り、催告は有効であり、また債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には建物買取請求権は発生しない。
問題の所在(論点)
1. 本来の債務額を超える過大催告がなされた場合、民法541条の催告として有効か。2. 借地人の債務不履行により土地賃貸借契約が解除された場合に、建物買取請求権(旧借地法4条2項)が認められるか。
規範
1. 債務不履行に基づく解除の催告において、催告額が本来支払うべき額を超過していても、その超過の程度が僅少であり、かつ特段の事情がない限り、その催告は契約解除の前提として有効である。2. 借地人の債務不履行を理由として土地賃貸借契約が解除された場合、借地人は借地法4条2項(現行借地借家法13条)に基づく建物買取請求権を行使することはできない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、約3年分の延滞賃料として37万6562円を3日以内に支払うよう催告した。しかし、実際の適正賃料の合計額は34万8080円であり、催告額は適正額を2万8482円上回っていた。賃借人がこれに応じなかったため、賃貸人は賃貸借契約を解除し、建物の収去と土地の明け渡しを求めた。これに対し賃借人は、催告の無効と建物買取請求権の行使を主張した。
事件番号: 昭和42(オ)1080 / 裁判年月日: 昭和42年12月26日 / 結論: 棄却
借賃支払の催告に定められた金額が、約定の借賃額の四・七倍以上に達するのみならず、その計算の基礎において理由のない主張に基づいているときは、右催告は無効と解すべきである。
あてはめ
1. 本件における超過額は約2万8000円であり、適正賃料額の1割にも満たない。このように超過の程度が僅少であるときは、特段の事情がない限り、催告は有効であると解される。2. 債務不履行による解除は借地人の帰責事由に基づくものであり、このような場合にまで建物買取請求権を認めて借地人を保護する必要はないため、権利行使は否定される。
結論
本件催告は有効であり、債務不履行に基づく解除が成立する。また、債務不履行による解除である以上、賃借人の建物買取請求権は認められない。
実務上の射程
過大催告については、本件のような「僅少な差」の場合だけでなく、債務者が本来の額を支払う意思があっても催告額が著しく過大で、その額でなければ受領しないという意思が明確な場合には無効となる等、比較検討の視点が重要である。建物買取請求権の否定は、誠実な契約履行を前提とする制度趣旨から導かれる確立した判例法理である。
事件番号: 昭和33(オ)657 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の支払催告において、催告額が正当な額を超過していても、債権者に正当額の提供では受領しない意思が明確でない限り、正当額の限度で催告は有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、約1年分の延滞賃料として2万377円の支払を3日以内に催告した。しかし、当時の賃料統制額…
事件番号: 昭和38(オ)265 / 裁判年月日: 昭和39年1月28日 / 結論: 棄却
催告の額が多額に失しても、債権者において客観的に正しい賃料額を受領しない意思が明瞭でない場合においては、債権者は、債務者の履行の提供がないかぎり、契約を解除することができる。
事件番号: 昭和41(オ)315 / 裁判年月日: 昭和41年9月20日 / 結論: 棄却
適正賃料額による延滞賃料の合計額が八〇九九円であるのに、催告額が八三八二円四〇銭であつた場合には、右催告は適正の賃料額の限度において有効と解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
賃貸建物の延滞賃料と共に賃貸借の存在しない建物占有による損害金とを不可分的に併せてした催告であつても、当該賃貸借契約解除の前提たる催告として有効である。