約定賃料額ないし増減請求権行使によつて改訂された具体的賃料額を確定することなく、催告にかかる賃料額が相当賃料額に当ることをもつて、賃貸借解除の前提たる賃料支払の催告を有効とした判断には、審理不尽、理由不備の違法がある。
具体的賃料額を確定することなく賃貸借解除の前提たる賃料催告を有効とした判断に、審理不尽理由不備があるとされた事例。
民法541条,民訴法395条1項6号
判旨
賃貸借契約の解除の前提となる賃料支払催告が有効であるためには、催告された金額が契約上の具体的な合意賃料額と照らして相当である必要がある。統制賃料額(公定額)を基準に催告を有効と判断するには、別途その額とする合意や増減請求権の行使等により、当該額が具体的賃料額となっていることを要する。
問題の所在(論点)
具体的賃料額(契約上の債務額)を確定させることなく、客観的な相当額や統制賃料額に基づいてなされた賃料催告を、解除の前提となる有効な催告と認めることができるか。
規範
賃貸借契約の解除要件としての催告(民法541条)が有効か否かは、催告に係る賃料額が、契約における具体的賃料額との関連において相当であるか否かによって判断される。契約当初の約定賃料額がある場合、統制賃料額等への変更についての合意や賃料増減請求権の行使がない限り、当然に客観的な相当額や統制額が契約上の具体的賃料額になるわけではない。
重要事実
賃借人である上告人は、前賃借人の権利を承諾を得て譲り受け、賃貸人である被上告人と賃貸借契約関係にあった。被上告人は、昭和23年度から36年度分までの賃料として計26,755円を催告し、上告人がその期間中に3,454円のみを支払ったことをもって、催告期間経過による契約解除を主張した。原審は、具体的賃料額の認定を欠いたまま、催告額が当時の統制賃料額に相当することを理由に催告を有効と判断し、解除を認めた。
事件番号: 昭和33(オ)657 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の支払催告において、催告額が正当な額を超過していても、債権者に正当額の提供では受領しない意思が明確でない限り、正当額の限度で催告は有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、約1年分の延滞賃料として2万377円の支払を3日以内に催告した。しかし、当時の賃料統制額…
あてはめ
本件では前賃借人からの賃料約定が承継されていると解されるが、原審は約定賃料額を認定せず、証拠もないとしている。具体的賃料額と統制賃料額が同一でない場合、統制額を具体的賃料額とするには、統制額変更の都度の合意や増減請求権の行使が必要である。それにもかかわらず、具体的賃料額と催告額の関係を何ら説示せずに、単に催告額が統制額に相当するということのみをもって催告を有効とした原審の判断は、審理不尽・理由不備である。
結論
本件催告が有効か否かを判定するには、具体的賃料額との関連において相当かを判断すべきであり、その審理を尽くさずになされた解除の有効判断は違法である。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
過大催告の有効性が争点となる場面で、その前提として「債務の本旨」たる具体的債務額の確定が不可欠であることを示す判例。答案上では、催告された金額が客観的な正当額であったとしても、それが契約上の具体的賃料額として確定していない場合には、直ちに有効な催告とはならないという論法で使用する。
事件番号: 昭和42(オ)1080 / 裁判年月日: 昭和42年12月26日 / 結論: 棄却
借賃支払の催告に定められた金額が、約定の借賃額の四・七倍以上に達するのみならず、その計算の基礎において理由のない主張に基づいているときは、右催告は無効と解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和38(オ)1164 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和30(オ)752 / 裁判年月日: 昭和32年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人が賃料の受領をあらかじめ拒絶している場合には、口頭の提供をせずになされた供託も有効であり、また、催告された賃料額に比して未払額が極めて少額である場合には、信義則上、当該債務不履行を理由とする解除は認められない。 第1 事案の概要:賃借人(被上告人)は、賃貸人(上告人)が賃料の受領を拒絶するこ…