賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
借地人に対する賃料請求権を有する地主は借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができないか。
借地法10条,民法612条,民法709条
判旨
土地賃貸人が賃借人に対し賃料請求権を有している場合であっても、賃貸人が実際に賃料の支払を受けていない限り、無断譲受人に対し賃料相当損害金を請求することを妨げない。
問題の所在(論点)
賃貸人が当初の賃借人に対して賃料請求権を有している場合、無断譲受人に対する不法占有に基づく賃料相当損害金の請求が認められるか。
規範
土地賃貸人が賃借人に対して賃料債権を有している事実のみをもって、無断譲受人による土地使用から生じる賃料相当額の損害が発生していないとはいえない。賃料の現実的な受領がない限り、賃貸人は無断譲受人に対し、不法占有に基づく損害賠償を請求し得る。
重要事実
上告人は、賃貸人(被上告人)の承諾を得ることなく本件土地の借地権を譲り受け、その地上に建物を所有して土地を占有していた。被上告人は、当初の賃借人(訴外E)に対して賃料請求権を有していたが、現実には賃料の支払いを受けていなかった。そこで被上告人は、無断譲受人である上告人に対し、賃料相当損害金の支払いを求めて提訴した。
事件番号: 昭和38(オ)958 / 裁判年月日: 昭和39年7月29日 / 結論: 棄却
賃借地上の建物の譲渡に伴い、地主の承諾なくして賃借権が譲渡された場合には、地主は建物譲渡人に対する賃料請求権を失わないけれども、現実に譲渡人より右賃料の支払を受けないかぎり、譲受人に対して賃料相当の損害金の請求ができる。
あてはめ
被上告人が訴外Eに対して賃料請求権を有しているとしても、そのことのみから直ちに賃料相当の損害が生じないとは判断できない。本件において被上告人が現実に賃料の支払いを受けていない以上、土地を権原なく占有している上告人に対し、損害金の支払義務を認めるのが相当である。また、建物買取請求権の行使に伴う建物の時価算定においては、場所的環境も考慮されるべきであり、原判決の認定は正当である。
結論
被上告人が賃料の現実の支払いを受けていない限り、無断譲受人である上告人は被上告人に対し、賃料相当損害金の支払義務を負う。
実務上の射程
無断譲渡・転貸の事案における損害賠償請求の範囲を画する。賃貸人が賃借人との契約を解除せず賃料債権を保持したままであっても、現実に回収できていない限り、不法占有者たる譲受人への損害賠償請求が可能であることを示した。不法行為(民法709条)に基づく請求において、損害の発生を「現実の利益の喪失」の観点から判断する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)842 / 裁判年月日: 昭和40年4月2日 / 結論: 棄却
土地の賃借人は、その土地の上に登記した建物を有しないかぎり、右賃借権の存在を知つて土地所有権を取得した第三者に対しても土地賃借権を主張することができない。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…